投資信託

EXCELで外国株ファンドのトラッキングエラーを計算する

以前のトラッキングエラーに関する記事で、インデックスファンドの評価にはトラッキングエラーが重要だが、国内籍の外国株ファンドのトラッキングエラーは結構大きく出てしまうということを書きました。

https://in-invest.net/2018/04/19/post-319/

理由は大きく分けて3つ。

配当金要因・・・配当なし指数(プライスリターン)とファンドの基準価額(配当金含むトータルリターン)を比べる場合は、配当金相当額が差異要因になる。リテールの商品ではオフィシャルなベンチマークを配当なし指数にしているものが結構ある。

コスト要因・・・外国株インデックスファンドでは、信託報酬が0.12~0.70%程度、売買費用とカストディフィー(外国株の現地での管理費用)が実費で年間0.05%~0.10%程度かかり、その分が差異になる。

為替の時点・・・国内籍の投資信託は、外貨建て資産の評価に基準価額算出日のTTM(日本時間10時時点の銀行の仲値)を使う。MSCIの指数はロンドンフィキシング(英国時間午後4時)の為替レートで算出されるため、MSCIがドル建てで算出した指数を翌日のTTMで円換算すると、この間の為替の変動がパフォーマンスの差異になる。

この他に、ファンドマネージャーの運用手法の差異(完全法と最適化法、資金流出入対応、先物によるキャッシュ部分の調整、銘柄入替対応)もありますが、これは過去のリターンから推測するのは難しいと考えています
私見ですが、日系大手のファンドは、マザーファンドを適格機関投資家私募の商品にも使っている(≒トラッキングエラーが大きいパッシブファンドは解約される)ため、丁寧に運用していると考えています。

さて、公募投信のトラッキングエラーがオフィシャルには公表されず検索して見つかる数字もイマイチ当てにならないのであれば、自分でトラッキングエラーを計算してみようというのが当記事の目的です。特に「配当金要因」は適切な配当込指数をベンチマークにすれば(相当程度)切り分けることができます。

eMAXIS Slim先進国株のトラッキングエラーを計算してみよう

では具体的に、国内籍の外国株インデックスファンドのトラッキングエラーを計算してみましょう。対象は低コストで大人気のeMAXIS Slim先進国株式インデックスにします。
今回は月次で計算します。

トラッキングエラーの計算自体は、エクセルのSTDEV関数で一発なのですが、準備段階がめんどくさいです。

データを入手する

①ファンドの基準価額の時系列データを入手する。

MUKAMに限らず、日系大手はホームページに過去の基準価額の推移をcsvで掲載しているところが多いです。

https://emaxis.jp/fund/252653.html

(ページ上部の設定来データ)

②ベンチマークの時系列データを入手する。

MSCIのサイトから入手できます。指数算出会社の著作物なので、利用許諾をよく読んで使いましょう。

https://www.msci.com/end-of-day-data-search

(要Flash)

ここでポイント。投資信託のオフィシャルなベンチマークがなんであれ、国内籍の外国株インデックスファンドを評価するのであれば、指数の種別(Index Level)はNet Total Return、通貨(Currency)はいったんUSDで取得することをおすすめします。

MSCIの配当込みの指数には、Net とGrossの2種類があります。違いは、配当金の源泉所得税の計算方法です。
Grossは源泉所得税を考慮せず、配当金を額面満額受領したものとして計算します。Netは外国人投資家に一般的に適用される源泉所得税率を控除した金額を受領したものとして計算します(米国なら30%、日本なら15.315%です)。
国内籍の投資信託から外国株に投資した場合は源泉税がかかるのが現実の世界なので、Grossのリターンは基本的には実現不可能な数字です。
ここらへんの話は、各国の租税条約の軽減税率と合わせると深い話になるので、別エントリで詳しく書きます。

③三菱UFJ銀行のTTMの時系列データを入手する。

検索すると一番上に出てくる三菱UFJリサーチ&コンサルティングのサイトから取得しても、他の投資情報サイトで時系列になっているものを取得しても良いです。

時点を合わせて計算する

これがとてもめんどくさい。

こちらの計算過程を見ながら読んでください。

まずEOMONTH関数などを使って、月末の日付を出します。月末が土日祝日だと対応する基準価額が無いので、営業日ベースの月末最終営業日にします(「基準価額の基準日」)。
次に、Vlookup関数などで、月末の日付に対応する基準価額を拾います(「基準価額(配当再投資)」)。また、同日のドル円のTTMの列を作ります(ドル円為替レート(TTM))。
続いて、基準価額に対応するベンチマークの日付を並べます。国内籍投信の基準価額は、外貨建て資産の評価に、前営業日の終値を使います。したがって、比べるべきベンチマークは前営業日時点のものです。「基準価額の基準日」が営業日ベースになっていれば、一日前に倒すだけで問題ないはずです(「ベンチマークの基準日」)。
「ベンチマークの基準日」時点の指数の値を拾います(「USD建てベンチマーク」)。これを「ドル円為替レート(TTM)」で円換算し、「円換算ベンチマーク」を得ます。

あとは簡単です。基準価額と円換算ベンチマークの月次リターン(当月/前月-1)を計算し、それを引き算して月次超過収益率を出します。STDEV.S関数等で月次超過収益率の標準偏差を出して、√12をかけて年率換算したものがトラッキングエラーです。

面倒ですよね。ただ、ベンチマークとTTMのデータを一度そろえれば、あとは委託会社のサイトから基準価額を入手するだけなので、2ファンド目以降はもっと簡単にできます。

TEの値の評価

さて、上の計算例だと、年率換算したトラッキングエラーは0.20%でした。
(2017年2月設定で計算期間が2年弱しかないので参考値として見てください。)
ちなみに、楽天証券のホームページだと、執筆時点で同ファンドのトラッキングエラーは2.59%でした。おそらく、ベンチマークにプライスリターン(配当なし)指数を使っているのではないかと推測します。

https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/detail/?ID=JP90C000ENC5

管理人の個人的な評価になりますが、基準価額ベースの検証であることを考慮すると、この0.20%という数字は問題ない水準だと思います。

このファンドは、現在の信託報酬は年間0.11%程度と国内最低水準ですが、2018年に引き下げる前は0.19%程度でした。

単純な足し算・引き算では考えるのは正確ではありませんが、
信託報酬0.19%、その他の費用(証券会社手数料、カストディフィー等)0.10%程度と考えると、それだけで0.29%程度なので、それ以下に抑えているのは良くできていると言えるのではないでしょうか。
おそらく、指数とファンドの源泉税率の違い(国によっては租税条約で定める軽減税率があり、MSCIのNet指数よりも源泉税率が低い)が、ファンドのリターンにプラス要因になり、コスト要因(マイナス要因)を打ち消す方向に作用しているのではないかと推測します。

おわりに:TEマニアにはならなくていい

最後に、マインド的な面について述べます。
私自身は、公募投信のTEの精査に時間をかけよりも、投資判断に時間を使ったほうが建設的だと考えています。マーケットタイミングを図る投資方法ではなくても、例えば、外国株のベンチマークにエマージング入れるかとか、各資産への配分はどうするかとか、判断すべき事項はたくさんあります。
トラッキングエラーの文句は、同じマザーファンドの商品に投資している機関投資家が言ってくれることを期待しています(サボり)。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

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