株価指数 株式投資

日経平均先物と現物の日経平均の価格乖離(配当と金利と貸株)

2021/3/25

本稿では現物の日経平均株価と日経平均先物の価格乖離がなぜ起こるかについて解説します。 実際の数値例を出しますので、教科書的な知識と現実のブリッジとして読んでいただけると書いた甲斐があります。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 日経平均と日経平均先物の価格乖離1.1 配当と金利と貸株1.2 配当と短期金利でどの程度説明できるか2 おわり 日経平均と日経平均先物の価格乖離 現物株225銘柄から算出される日経平均株価(株価指数)と、日経平均株価を原資産とした先物である日経平均先物の価格は、通常は一致しません ...

ReadMore

株式投資

金利上昇による株価下落でグロース株が特に不利な理由

2021/3/5

本稿では、金利上昇で株価が下落する理由を解説します。 3年前にも似たようなことを書いていますが、現在の局面にあてはめて書きます。 せっかく金利と株価の関係に注目が集まっているのに私の過去記事にはさして流入が無いので悲しいのです。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 金利上昇で株価が下がるメカニズム1.1 金利と株価の関係1.2 配当割引モデルで考える1.2.1 債券への資金流入⇛期待収益率(割引率)の上昇1.2.2 企業業績への影響⇛予想成長率の低下(業種によっては上昇)2 グロース株と金利上昇3 おわ ...

ReadMore

株式投資

東証の流通株式時価総額の定義変更で何が変わるか

2021/2/18

2022年4月に東京証券取引所が市場区分の再編を行います。 現行の市場第一部、第二部、マザーズ、ジャスダックの区分を再編し、「プライム」「スタンダード」「グロース」に再編する計画です。 この中で、東証が上場審査と上場廃止基準で使用する「流通株式」の定義が見直されます。 これは、2019年に実施された金融庁の審議会でも言及されていましたが、2020年12月に東証から変更後の具体的な計算方法が公表されました。 本稿ではこの「流通株式」の定義の変更について、現在の基準との違い等の観点から解説します。 東証の資料 ...

ReadMore

投資信託

アセットマネジメントにおけるデューデリジェンスとは

2021/2/5

金融業界では「デューデリジェンス」という言葉が2つの意味で使われます。 もともとDue Dilligenceという言葉は「適切な注意義務を果たす」「適正な手続きを踏む」というニュアンスの言葉です。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 M&Aにおけるデューデリジェンスと資産運用におけるデューデリジェンス2 アセットマネジメントにおけるデューデリジェンスの全体像2.1 資産運用のデューデリは誰がするか2.2 資産運用のデューデリのフロー2.3 資産運用のデューデリの評価項目2.3.1 定量評価2.3 ...

ReadMore

株価指数

全世界株指数にはREITが含まれているがTOPIXにはJ-REITが含まれない

2021/1/28

本稿では、世界のメジャーな株価指数はREITを含むが、日本で算出されている日経平均やTOPIXにはなぜかJ-REITが含まれていないという問題を掘り下げます。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 S&P500もMSCI ACWIもREITを含む2 TOPIXや日経平均はなぜかREITを含まない2.1 J-REITは名実ともに投資法人(ファンド)なのだ2.2 US-REITはファンドっぽくない3 おわり 青(J-REIT)は藍(US-REIT)よりも青し(Investment Trust)? S& ...

ReadMore

株価指数

バリュー株指数とグロース株指数の計算方法(PBR等で分類)

2021/1/27

本稿では、バリュー株指数やグロース株指数の算出方法を解説します。 日本の投資家が指標として見ることが多い、TOPIX(東証)、ラッセル、MSCIの指数については具体的な算出方法にも触れます。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 バリュー株とグロース株2 「バリュー株指数」と「グロース株指数」2.1 バリュー銘柄、グロース銘柄、そして中間の銘柄2.2 TOPIXのバリューインデックスとグロースインデックス2.3 ラッセルのValue指数とGrowth指数2.4 MSCIのValue IndexとGrowt ...

ReadMore

株価指数

時価総額世界1位のサウジアラムコは指数にどれくらい入っているか(エマージング)

2020/12/7

ちょうど1年前に、サウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコの上場がニュースになっていました。 この時は「時価総額世界最大!アップルやマイクロソフトを上回る!」という報道が多かったので「発行済株式の1.5%しか売り出さない銘柄を全株数ベースの時価総額で騒ぐのはおかしいでしょ」という記事を書きました。 今回はフォローアップとして、アラムコの株数が代表的な株価指数の算出でどう扱われているかをまとめます。 アラムコのMSCIの浮動株比率は1%強 最初にMSCIサウジアラビア指数を見ます。 2020年11月末ベ ...

ReadMore

ファイナンス理論

ビットコインと伝統資産の相関関係(株式、債券、ゴールド、ドル)

2020/12/6

2020年11月末、米ドル建てのビットコイン価格は19,000ドルを超え、2017年末以来の最高値を更新しました。 円建てでも現在200万円近辺で推移しています。 ビットコインに限れば、2017年末から2018年初にかけて参入した出川組のほとんどを救う水準まで回復したことになります。 ※出川組⇛出川哲朗が出演するコインチェックのテレビCMが放映されていたのが、ちょうどビットコインが前回高値をつけた2017年12月頃でした。「兄さんが知らないはずないだろう!」ってやつ。 良い機会なので、ビットコインと伝統資 ...

ReadMore

ETF

全然話題になってない三菱UFJFGのESG/ETNの解説(2070,2071,2072)

2020/11/24

2020年11月26日に、三菱UFJフィナンシャルグループが運用管理するESG関連等の3つのETNが東証に新規上場します。 現在の東証ETNは野村ホールディングスの1社供給なので新規管理会社の参入ですが、これが悲しいほどに話題になっていません。 興味がある人のために、自分がETNの有価証券届出書と指数のメソドロジーを確認して気づいた事項をまとめます。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 ETNの銘柄概要2 ETN-JDRの上場形態(ストラクチャー)3 指数の詳細3.1 (前提1)STOXX JAPAN ...

ReadMore

ETF

時価52兆円の東証ETF市場の見取り図(ETF/ETN組成形態別の銘柄数と時価総額)

2020/11/17

東証のETF・ETN市場の2020年11月時点の時価総額はおおむね52兆円です。 興味があって組成形態(上場形態)別の銘柄数と時価残高をまとめたので本稿で解説します。 特に海外との重複上場の形態について、JDR形態のもの(UBSの欧米株関連ファンド)と非JDR形態のもの(SPY=1557やGLD=1326)に分けてまとめたものはあまり見ないので、興味がある方は参考にしてください。 東証ETF・ETNの商品形態別銘柄数および時価残高 東証上場ETFの銘柄数および時価総額別の内訳は以下の通り。 時価は複数日に ...

ReadMore

株価指数

配当込み株価指数の解説(配当込みTOPIX、MSCIのネット/グロストータルリターン指数など)

本稿では、配当込みの株価指数(トータルリターンインデックス)について解説します。
計算方法を数値例を使って解説し、ネット・トータル・リターンとグロス・トータル・リターンについても現地源泉税の話を真正面から解説します。

配当込み指数(トータルリターン指数)とは何か?

「配当込みの株価指数」とは、指数の構成銘柄の配当金の受取を考慮して算出された株価指数です。
通常、報道で目にするTOPIX、日経平均、S&P500といった株価指数は、特に断りがなければ配当を含みません。
配当を含まない株価のみで算出された指数をプライスリターン指数と呼びます。

株式の保有から得られるリターンには配当が含まれるため、資産運用のベンチマークには、プライスリターン指数よりも配当込み指数を使う方が適切です。

導入:プライスリターンの株価指数

配当込み指数の前に、配当を含まないプライスリターンの株価指数がどのように算出されているかを簡単に解説します。
簡素化のため、A,B,Cの3銘柄からなる架空の時価総額加重平均指数を考えます。
下表は、時価総額ウェイトがおおむね25%、15%、60%となるA,B,Cの3銘柄について、6月8日を100とする時価総額加重平均の株価指数を計算したものです。

各日の構成銘柄の時価総額合計を計算し、それを基準時点(6月8日)の時価総額合計で割って算出します。ちなみに、TOPIXの基準時点は1968年1月4日です。
実際には浮動株調整や、銘柄入替や合併等に伴う調整を行いますが、時価総額加重平均の株価指数というのは基本的にこのように計算されます。
これが、株価と発行済株式数だけから計算するプライスリターンの株価指数です。
期間最終日の6月11日は、AもBも上昇していますが、ウェイトが高いCが下落しているため、指数は小幅下落していることを覚えておいてください。

本題:配当込み(トータルリターン)の株価指数

本題の配当込み指数(トータルリターン指数)に移ります。
端的に述べると、配当落ちのタイミングで配当金相当額を加算して計算するのが、配当込み(トータルリターン)の株価指数です。

ここでは、上の設例に配当金の情報を加えたもので解説します。
6月11日がCの配当落ち日(6月10日が権利付き最終売買日)で、予想配当金は1株あたり1,000円だとして、配当込みの株価指数を算出したのが下表です。

配当落ち日の11日の指数の算出にあたり、当日配当落ちになった分を時価総額に含めるように計算します。
(極めてディープなことを言うと、MSCIは設例のように配当要因を当日の時価総額に加算し、東証(配当込みTOPIX)は配当要因を分母となる基準時点の時価総額から控除することで調整しています。結果は同じです。)

配当込み指数では、6月11日の指数値が106になり、前日よりも上昇しています。
「ウェイトの高いCの株価が下落したが、それは配当落ちの影響によるもので、投資家のトータルリターンを見ればCもトントンだった」というのが設例の状況です。
支払われてもいない配当金を落ち日の時点で収益認識するのは引っかかるかもしれません。ただ、投信や信託ファンドの経理処理でも上場株式の配当金は落ち日に未収配当金として収益認識するため、そのような発生ベースの会計とは整合的な計算方法です。
(つまり、日本株ファンドの4月から6月中旬くらいまでの基準価額にはまだ支払われてもいない配当金が含まれているのです。)

ネット・トータル・リターン指数とグロス・トータル・リターン指数

配当込み指数にはグロスとネットがあります(Gross Total Return Index/Net Total Return Index)。

グロスとネットの差異は源泉税を考慮するかの違いから

グロス・トータル・リターン指数は、配当に関する源泉税を考慮せず額面通りの配当金額で計算します。
上の例のように、C社の配当金額10,000円をそのまま計算に使用するのがグロストータルリターン指数です。

ネット・トータル・リターン指数は、源泉税控除後の配当金額で計算します。
例えば、上の例でC社が日本株だとすると、本邦居住者の投資家の多くは20.315%の源泉税(所得税+住民税+復興特別所得税)が源泉徴収されます。
(NISAのような非課税制度や二重課税の排除がある投信など、例外も相応にあります。)
上の設例のC社の配当金額10,000円には2,031円が源泉徴収され、投資家の手取り金額は7,969円です。ネットトータルリターンの株価指数では、源泉税控除後の7,969円を配当金額として使用します。

MSCIと東証の例

ネット・トータル・リターン指数の算出で、各市場の源泉税率にどの数字を使うかは指数算出者が決めます

例えば、MSCIはネットとグロス両方のトータルリターン指数を算出しています。
グローバルな資産運用のベンチマークとして指数を算出している同社は、ネット指数の計算では外国人投資家に一般的に適用される税率を使用します。米国であれば30%、日本であれば15.315%です。

また、東証の配当込みTOPIXは、長きに渡り源泉税を考慮しないグロスの指数のみが算出されていました。通常は、配当込みTOPIXと言えばグロスのものを指します
TOPIXは日本の機関投資家が日本株運用のベンチマークにするのが主な用途なので、グロスなのは実は理に適っています
公的年金等が受益者の年金特金は非課税であり、投資信託も二重課税の排除のためファンドの段階では非課税です。源泉税を考慮する必要がありません。
なお、知名度は低いですが、東証は2013年から税引後配当込みTOPIXはという指数も算出しており、これがTOPIXのネット・トータル・リターン指数に該当します。算出要領には「上場株式の配当に係る源泉徴収税率(地方税除く)」を使うとあるため、現時点ではMSCI同様15.315%を使っているはずです。

グロス指数とネット指数はどちらがベンチマークとして適切か

ファンドのベンチマークにグロス指数とネット指数のどちらを使うのが適切かは、限定的なケースを除いて答えがありません。

例えば、日本国内で設定された日本株の投信であれば、日本国内で二重課税の排除が完結するため、ファンドは源泉徴収なしで配当金を受領できます。
このような場合はグロス指数をベンチマークにすることが適切です。
米国株に投資する米国籍のファンド(SPYやVOOなど)も同様です。

一方、この世界では、非居住の投資家が受領する配当金には広範に源泉徴収を義務付ける国が多いです。
例えば日本の投資信託(eMaxis slim S&P500等)が米国株から受け取る配当金は、日米租税条約に基づいて軽減税率の10%で現地源泉税が控除されます。
このように、現実の世界には現地源泉税が存在するため、源泉税を考慮しないグロス指数はベンチマークとして不十分です(それでもプライスリターンよりは適切です。運用者には酷です。)。

ただ、ネット指数が完全な正解とも言い切れません
MSCIのネット指数は米国株の配当金を30%の現地源泉税率で計算します。
これは、各国との租税条約を考慮しない最高税率です。
(ケイマン等のタックスヘイブンに設立されたファンドはこの最高税率です・・・!)
対して、実際に日本の投信に適用される米国株の現地源泉税は軽減税率の10%です。
米国株の配当利回りを年率2%とすると、源泉税率が20%違うと、年間0.40%相当の差異になります。ファンドのネット指数対比のパフォーマンスはその分ゲタをはくことになります。
(配当の2%相当分まるまるゲタを履くことになるのがプライスリターン指数との比較です。プライスリターンのベンチマークがいかに不適切か分かります。)
国際分散投資を行うファンドでは、このように「現実はグロスとネットの間」ということになりがちです。

国際分散投資と現地源泉税については以下の二重課税・三重課税の記事で取り上げていますので、よりディープに知りたい方はあわせてご一読ください。

ファンド(投信・ETF)の内側でかかる税金(二重課税、三重課税)

当記事では、ファンドの内側(内部)でかかっている税金が、ファンドの種類によってどう違うかを解説します。 マニアックな話ですが、2020年から ...

続きを見る

おわり:転入者研修でよくしてた話です

以上です。
配当込みの株価指数について深い理解を求めている方の参考になれば嬉しく思います。

この話は、外株の仕事をしていた頃に、若手や日本株からの異動者によくしていた解説です。どちらかと言うとファンドマネージャーよりプロダクトスペシャリストや商品企画の人が詳しい分野。

  • この記事を書いた人

ton

2007年から運用会社や金融機関の運用部門で株を中心に見てきました。 現在は運用業務からは離れていて運用は自己資金のみ。 投信の請求目論見書や指数の算出要領からプロダクトの中身に迫るのが好き。

-株価指数
-, , ,

© 2021 儲からない投資の知識