経済指標・マクロ

世界経済見通しを出している機関のざっくりとした解説(IMF、世界銀行、OECD)

2019年1月25日

本稿では、公的機関の出すグローバルな経済成長率予想の種類を解説します。
注目度では、トップがIMF、次点が世界銀行、続いてOECDといったところでしょうか。

ちなみに、本稿を執筆の少し前にIMF(国際通貨基金,International Monetary Fund)が世界経済見通しを改定しました(2019年1月21日付)。
2019年の世界全体の経済成長率見通しを+3.5%と、昨年10月に発表した見通しから△0.2%下方修正しています。特に欧州と中東の改定率が大きくなっています。
ただ、米国と中国の見通しが変わらなかったこともあり、市場ではあまり材料視されなかったようです。(米国と中国は昨年10月に下方修正済でした。)

IMFの世界経済見通し(2019年1月発表値)

IMFのWorld Economic Outlook

IMFは世界経済の見通しをWorld Economic Outlook(WEO)という名称で公表しています。
WEOは毎年4月に通年の成長見通しを長いレポートと共に発表し、その後、7月、10月、1月の四半期ごとに改定(update)を行います。

最新版(日本語)

最新版(英語)

IMFのWEOは、権威があるだけでなく、四半期ごとに改定され、多くの国をカバーしているので、世界経済の見通しについて何か書けと言われた時にとっかかりにする人が多いです。

ただ、報道ベースだと、世界全体、先進国、新興国、日本以外の数字は出てこないので、必要に応じて現物を参照するのが良いです。

以前は日本語サイトにはレポートの要約くらいしかありませんでしたが、今は日本語による情報発信が充実しています。

余談ですが、IMFは通貨の安定等を目的として、経常収支が著しく悪化したり国家債務の返済が困難になった国に融資を行う国際機関です。
ただ、IMFの活動に対しては以下のような批判もあります。

・IMFが融資の返済のために、債務国に緊縮財政や増税を勧告したことが、債務国の経済成長の停滞につながった。
・独裁政権下にある国にIMFが行った融資(いくらかは腐敗政権の中で消えた)が、後に誕生した民主政権の政治運営を圧迫している。国債がデフォルト(元利金の支払いが出来なくなること)すると、支払期日のリスケジューリングや債務の一部放棄が行われるが、国家には破産は認められない。

特に、2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツは、著書の「世界を不幸にしたグローバリズムの正体」などで、厳しいIMF批判をしています。

 

世界銀行のGlobal Economic Prospects

世界銀行はGlobal Economic Prospectsという名称で世界経済見通しを発表しています。
IMFのWEOと違い、こちらは毎年1月と8月の年二回改定です。

IMFと比べると日本語サイトが充実していないので、レポート見たい時は英語サイトに行ったほうが良いかもしれません。

IMFが国家の経常収支悪化や債務危機に対応することを主目的にしているのに対し、世界銀行は、発展途上国のインフラ開発等に資金を出すことを目的としています
日本だと、東海道新幹線に世界銀行からの融資が使われたことが割と有名です。

 

OECDのGlobal Economic Outlook

OECD(経済協力支援機構、Organization for Economic Co-operation and Development)はGlobal Economic Outlookという名前で経済成長率見通しを公表しています。3機関とも名前が似ててわかりにくいです。テストには出ないので覚えなくて良いでしょう。

こちらも毎年6月と11月の年2回改定です。

OECDはもともと第二次世界大戦で荒廃した欧州の復興のために作られた機関です(マーシャル・プランの受け皿)。欧州の復興が一巡すると、経済成長や自由貿易推進のための先進国間の意見交換の場として再定義され、米国、カナダ、日本、90年代以降はポーランドなどの新興工業国が加入しました。
最近聞きませんが、2000年くらいまで「先進国クラブ」とも呼ばれていました。

経済関連だと、
エコノミストや債券の運用者がよく見ている「OECD景気先行指数」や、

国際的な租税回避に対抗するための税務情報の相互照会スキーム

もOECDが主体となっているプロジェクトです。

 

おわり

以上です。

国際機関が発表する3種類の経済見通しについてご紹介しました。
仕事でエコノミストをやっている人(?)以外は、更新頻度が高いIMFを見ておけば良いと思います。

 

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