本稿では、2023年9月に上場した三菱UFJアセットのアクティブETFである2085 MAXIS高配当日本株ETFのレビューを書きます。
※ちょうどこの10月に旧三菱UFJ国際投信(MUKAM)と旧MU投資顧問が統合し三菱UFJアセットが発足しました。みずほ信託や三井住友信託に続いて信託の運用部門統合も視野に入れてたりするのだろうか?三菱UFJ信託は抵抗勢力多そう。
9月7日に上場したばかりなのでパフォーマンス分析はできませんが、公表資料とPCFファイルから運用の特徴と開始時の保有銘柄を見ていきます。
アクティブETFの記事はこれが最期です。以下はこれまでに書いた野村とシンプレクスの記事です。
野村アセットの2083日本成長株アクティブETFと2084日本高配当株アクティブのレビュー
シンプレクスの2080・PBR1倍割れ解消ETFのレビュー
目次(クリックで各項目にジャンプ)
2085 MAXIS高配当日本株ETFのレビュー
ファンドの概要
ファンド名:MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信
銘柄コード:2085
信託報酬:年0.4125%
組入銘柄数:30銘柄以上(上場時はジャスト30銘柄)
分配頻度:年4回分配(1、4、7、10月の10日に決算)
ベンチマークなし(販売用資料ではTOPIXと比較している参考指標として月報等ではTOPIXと比較する可能性あり)
運用の特徴
2085はアクティブETF6ファンドの中では最も力が入った販売用資料を用意している。eMAXISの会社だけあってネットで能動的に情報収集する現役世代の個人投資家を舐めてない。
同ファンドの運用は、東証上場の大型株・中型株の中から予想配当利回り上位銘柄を選定し、流動性を勘案して組入比率を決定するというプロセスになっている。
(中型株は典型的には時価総額1,000億円~3,000億円程度)
出所:2085販売用資料
銘柄選択について「配当動向や信用リスクを考慮しつつ」とあり、予想配当利回りのランキングをベースに減配可能性や財務安定性等をチェックするものと推測できる。ただ、これが配当性向等の数値指標に基づくネガティブチェックに過ぎない(→高配当株指数と変わらない)のか、同社のアナリストの定性判断のような運用会社独自のリソースを使うのかは資料からは読み取れなかった。
また、組入比率(ウェイト)は「流動性を勘案」するとあるので、基本的には時価総額が高い銘柄が上位に来るものと思われる。野村アセットの2084はウェイト決定にキャピタルゲインの獲得(=株価のアップサイド)も考慮するという方針だったのでそれと比べるとパッシブなアプローチ。
保有銘柄上位
上場時(9月6日基準)のPCF情報における組入ウェイト上位10銘柄は以下の通り。
各銘柄4%で固まっているので組入時の上限が4%だと推測できる(従ってこの10銘柄中の順位は意味がない)。時価総額6兆円のJTと3,000億円のあおぞら銀行が同ウェイトなので、この4%キャップは上限なしの時価総額加重と比べると中堅銘柄の寄与を押し上げる方向に機能する。
10位以下も見ると、18位のコスモエナジーHDまでがウェイト4%近傍だった。それ以降はもっとダイナミックなウェイト付けになっていき、保有30銘柄中で最もウェイトが低い4521科研製薬は0.62%だった。最も時価総額が低いのも科研製薬の1,500億円程度だったのでこのあたりが組入時の時価総額の下限になっているのだろう(中型株の1,000億円~とも整合)。
所見
運用プロセスはシンプルだが銘柄数の絞り込みゆえにかなり尖ったポートフォリオになっていると思う。
プロセス自体は予想配当利回りが高い銘柄を流動性(時価総額+売買代金?)でウェイト付けして組み入れているだけなのだが、銘柄数30銘柄は同種のETFの中ではかなり少ない方である。
参考 日本株高配当ETFの銘柄数の例
1489 日経平均好配当 50銘柄
2584 野村高配当アクティブ 100銘柄
2564 Global-X MSCI高配当セレクト 25銘柄(一番少ない)
例えば、2584ではウェイト上位にメガバンクや海運が目立っていたが、2585では商船三井のみが組入られている。
アクティブ運用として減配可能性のある銘柄の除外等にうまく対処しつつ銘柄の絞り込みができるなら面白い運用になると思うが、そのためにどういうアプローチをしているか(高配当株指数よりも精緻なアプローチなのか)は公表資料では具体的に書かれていなかった。
例えば、以下は配当利回り上位だが2085に採用されていなかった銘柄である(数値の時点はETFの上場日)。いずれも配当性向や財務に問題があるようには見えないので、同ファンドのネガティブチェックの方針が今ひとつよくわからないというのが正直なところ。
1719 安藤ハザマ 予想配当利回り4.8% 時価総額2,000億円程度
8630 SOMPO HD 予想配当利回り4.6% 時価総額2兆円程度
6417 SANKYO 予想配当利回り4.7% 時価総額4,000億円程度
おわり
以上です。
今般ローンチした6銘柄のアクティブETFのうち、シンプレクスの2081と2082以外には相応に資金流入が続いているようなので、折を見てパフォーマンスのフォローのような記事を書くかもしれません。
(ちなみに一番資金流入が多いのはPBR1倍割れ解消ETF(2080)で、地銀等の中堅金融法人の資金も入っているとかいないとか)