ETF 株価指数

全世界株指数(ACWI・オルカン)にイスラエル株式はどれくらい入っているか

本稿では、全世界株式(ACWI)、先進国株式(MSCI KOKUSAI)の中にイスラエル株式がどのくらい含まれているかを解説します。基本的にMSCIの指数ベースの話をします。

「第5次中東戦争」?

2023年10月7日、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスはイスラエルに大規模なロケット攻撃を行った。イスラエルはこれに対し戦争状態を宣言。イスラエルによるガザ地区への空爆やパレスチナ戦闘員のイスラエル都市内への侵入など、両者間の戦闘行為はエスカレートしている。第四次中東戦争の端緒となったエジプトによるイスラエルへの奇襲攻撃は1973年10月6日の出来事であり、ちょうど50年の節目に第5次中東戦争へと悪化しかねない衝突が発生したことになる。

背景については、サウジアラビアとイスラエルが接近していることや長年の封鎖でガザ地区内でのハマスの求心力が低下していることに対してハマス側に焦りがあったのではないかと報じられている。

平和な日本にいると先に攻撃したパレスチナ側が悪いと単純に捉えてしまいがちだが、パレスチナ問題は長い歴史の中でこじれにこじれた問題であり、イスラエル側の対パレスチナ政策もまた偏執的なまでに抑圧的だったことは思い出しておきたい(イスラエルによる東エルサレム等の実効支配と入植、ガザ地区の封鎖など)。

オルカンにはイスラエル株が入っている

グローバル株式というアセットクラスにおいて、イスラエル株式は「先進国株式の中にちょっとだけ入っている」という立ち位置である。

MSCIの株価指数では、世界の株式市場を、先進国(Developed)、新興国(Emerging)、フロンティア(Frontier, 超新興国)の3つに分類するが、イスラエル株式市場は先進国のくくりである。

最初から先進国だったわけではなく、2010年に新興国から先進国に変更されている。35年の歴史を持つMSCI Emerging Markets指数において、新興国から先進国に変更されその後も留まっているのはポルトガルとイスラエルの2カ国のみである(一度先進国になったが債務危機で新興国に出戻りしたギリシャを加えると3つ)。

出所:MSCI,ホームページ

日本を除く先進国で算出されるMSCI KOKUSAIや全先進国&全新興国で算出されるMSCI ACWIにはイスラエル株式が含まれるため、例えばMSCI ACWIに連動するeMAXIS Slim全世界株式(いわゆるオルカン)にはイスラエル株式が含まれている。

出所:eMAXIS Slim全世界株式運用報告書全体版(残高の時点は2022年5月12日)

全世界株式におけるイスラエル株式

イスラエルのウェイト

指数のファクトシート等をもとに全世界株式におけるイスラエルの構成比を計算すると以下の通りだった(2023年9月末時点)。

全世界株式(MSCI ACWI)におけるイスラエル株式の構成比→0.17%

日本を除く先進国(MSCI KOKUSAI)におけるイスラエル株式の構成比→0.20%

これは、

純資産総額1兆4,700億円のeMAXIS Slim全世界株式の中の25億円分

くらいの規模感である。

イスラエルのテック企業に注目しテルアビブを「中東のシリコンバレー」と喧伝する報道もあったが、時価総額加重平均の世界におけるイスラエル株式の存在感はこの程度である。

ファンド全体のパフォーマンスへの影響も誤差レベルだと考えて良い。

指数に採用されているイスラエル株式

以下はMSCIイスラエルの採用企業である。指数のファクトシートとiSharesETFの証券明細を参照している。

出所:MSCI Israel Index FactSheet(2023年9月末時点)

出所:iShares ACWI ETFの開示資料(2023年10月6日時点)

執筆時点ではMSCIイスラエル採用銘柄は14銘柄しかない。2つ目の表には14銘柄が含まれているのでこれで全てである。

覚えておいた方が良いと思うポイントは以下の事項。

中東のシリコンバレーのイメージは正しい

中東のシリコンバレーのイメージの通り、業種構成では、情報技術38%、金融36%、ヘルスケア11%が上位となっている。Check Point Software(情報セキュリティ技術)NICE(セキュリティ・監視システム)などテック系の中でもものものしい業態が目立つが、ホームページ作成のWIX.comのような会社も含まれている。

Mobileyeは(今は)採用されていない

おそらくイスラエル企業の中で最も有名なのは自動運転技術のMobileye(MBLY,モービルアイ)だと思うが、現時点ではMSCIには採用されていない。

MBLYは、NASDAQに上場していた同社を2017年にインテルが買収して上場廃止になったが、2022年10月にNASDAQに再上場したという経緯ががあるため、再上場後の期間が短いので未採用なのだと推測する。時価総額は330億ドル程度なので、採用されれば浮動株調整ベースでも指数内でウェイト首位になるはずだ。

米国上場の銘柄も多く楽天証券でも買える

イスラエル国内のテルアビブ証券取引所の上場銘柄だけでなく、NASDAQに上場している企業も多い。以下の銘柄は「米国株」として楽天証券の取扱銘柄に入っている。

楽天証券で米国株として売買できるイスラエル企業の株式

現地コード銘柄名銘柄名市場
CHKPCHECK POINT SOFTチェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズNASDAQ
CYBRCYBERARK SOFTWARサイバーアーク・ソフトウェアNASDAQ
ESLTELBIT SYSTEM LTDエルビット・システムズNASDAQ
GLBEGLOBAL-E ONLINEグローバル・イー・オンラインNASDAQ
ICLICL GROUP LTDICLグループNYSE
MBLYMOBILEYE GLOBALモービルアイ・グローバルNASDAQ
MNDYMONDAY COM LTDマンデー・ドット・コムNASDAQ
NICENICE LTDナイスNASDAQ
TEVATEVA PHARM. IND.テバ・ファーマスーティカル・インダストリーズNYSE
WIXWIX.COM LTDWix.comNASDAQ

出所:楽天証券の米国株取扱銘柄一覧より作成

おわり

以上です。自分が2010年前後にエマージング株を見てた頃はイスラエルはエマージング枠だったので、今でもどっちだったか迷うことがあります。
当時はジェネリック医薬品のTevaPharmaが一番有名な銘柄だったので、テクノロジー企業がこれほど目立つようになったのは2010年代以降の変化です。

 

 

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