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野村アセットのアクティブETFのレビュー(2083NF日本成長株アクティブ、2084NF日本高配当株アクティブ)

2023年9月7日

本稿では、野村アセットのアクティブETF2銘柄のレビューを書きます。
9月7日に新規上場なのでパフォーマンスの検討はできませんが、公表資料とPCFファイルから運用の特徴と開始時の保有銘柄を見ていきます。

2083 NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ上場投信(野村アセット)
2084 NEXT FUNDS 日本高配当株アクティブ上場投信(野村アセット)

市場発足時の最初の上場銘柄はゲーム機で言えばローンチタイトルと言えるでしょう。果たしてスーパーマリオやF-ZEROになれそうか?

関連 東証のアクティブETF解禁について書いた記事はこちら

2083 NF・日本成長株アクティブETFのレビュー

ファンドの概要

ファンド名:NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ上場投信

銘柄コード/愛称:2083 / NF・日本成長株アクティブETF

信託報酬:年0.6875%

組入銘柄数:60~80銘柄

参考指標:配当込みTOPIX
→配当込みTOPIXに対し、中長期的に年4%の目標超過リターンを見込む。想定するトラッキング・エラーの水準は年8%

分配頻度:年2回(1月と7月の7日に決算)

補足 参考指標・参考指数という甘え

参考指標、参考指数というのは運用成果の確認のためにファンドと比較する株価指数等のこと。「あくまで顧客の便宜のための比較でありベンチマークとして運用において正式に考慮しているわけではない」という運用会社都合の中途半端な位置づけであり、個人的には顧客を舐めた業界の悪癖だと考えている。

ただ必ずしも「参考指数だから不誠実」ではないことは強調したい。株のロングオンリーにも関わらず「絶対リターン」を標榜し参考指標すら提示しないファンドも少なくない。そのようなファンドと比べれば、本件のように参考指標を定め、目標超過リターンと想定トラッキングエラーまで提示する野村アセットの商品説明はかなり誠意ある開示姿勢だと思う(逆にそこまでするならベンチマークにすればとも思う)。

運用の特徴

商品説明によると

「高ROEを維持できる『優良企業』への⾧期投資を中心に、ROE改善を期待できる『変身企業』に機動的に投資することで、株価の上昇をとらえるETF」。

運用プロセスによると「優良企業」は同社の成長銘柄委員会(※)の決定、すなわちリサーチアナリストや運用チームの集合知に基づく選定であり、「変身企業」はより運用チーム・運用担当者のボトムアップ色が強い銘柄選択と見られる。

※推測だが成長銘柄委員会というのはCIO・株式ヘッド以下グロース株運用チームとセクターアナリストで構成する月次レビューのようなものだと思う。月次レビューよりも〇〇委員会と書く方が外向けのRFPで見栄えがいい。

出所:2083 NF・日本成長株アクティブETF 商品概要

保有銘柄上位

上場時(9月6日基準)のPCF情報における組入ウェイト上位10銘柄は以下の通り。

上場時の銘柄数は61銘柄で上位10銘柄で全体の32%。ウェイト下位銘柄は組入比率0.1%台なので相応にメリハリが効いたウェイト付け。

気になった銘柄は以下の2銘柄。

M3:現在は株価は調整局面だがウェイトはかなり上位。中長期的な高ROE維持は可能と判断しているのだろう。

テルモ:上位10銘柄で唯一のROEが1桁台。同社は2022年から自社株買いによる株主還元を再開しているのでROE改善が見込まれる「変身企業」枠の可能性がある。
(ROE8%は平凡。医療機器メーカーは高ROE銘柄が多いのでROEスクリーニングによる機械的な運用では選ばれにくい銘柄である。)

所感

ストレートなボトムアップリサーチ(アナリストやファンドマネージャーの企業訪問等による銘柄分析)によるグロース運用。「優良企業」については定例レビューの結果に基づくある程度システマティックな銘柄選定だと思われるが、そのベースはアナリストやファンドマネージャーのボトムアップリサーチである。また「変身企業」については運用担当者の裁量に基づく伝統的なアクティブ運用に見える。

逆に言えばグロースファクターと野村アセットの銘柄選択能力のみが超過収益の源泉になる商品なので、個人向けに訴求するには一般的なETFよりも積極的な情報提供が必要だと思う。同ファンドは相応に充実した商品説明を公開しているが、これだけの情報で運用実績がまだ分からないファンドを買おうとはなかなか思えない。

以下は、筆者の推測と偏見から今後の展開として予想されるもの。

ケースA・これから同社のグロース株運用の強みや運用担当者の発言などの情報発信やメディア露出を強化していく(ひふみやNVICのスタイル)

ケースB・運用実績が出てパフォーマンスで注目されるまで気長に構える。既存のグロース株運用の延長なので運用チームの限界的な負担はあまりなく、仕事が増えるのはディスクロージャーや取引所対応が中心のはず。

ケースC・実は地銀や中堅金融法人に向けた商品(情報提供は金法営業が頑張る)

ケースD・実は日本株のグロース株ETFは初なのでそれなりに引き合いがあると見込んでいる

2084 NF・日本高配当株アクティブETFのレビュー

ファンドの概要

ファンド名:NEXT FUNDS 日本高配当株アクティブ上場投信

銘柄コード/愛称:2084 / NF・日本高配当株アクティブETF

信託報酬:年0.5225%

組入銘柄数:100銘柄程度

参考指標:配当込みTOPIX
→配当込みTOPIXに対し、中長期的に年3~4%の目標超過リターンを見込む。想定するトラッキング・エラーの水準は年6~8%

分配頻度:年4回(1、4、7、10月の7日に決算。3月決算と12月決算会社の中間・期末配当の受領後に分配するようなイメージ)

商品の特徴

商品説明によると「安定的な『配当』と機動的な『値上がり益』の獲得により、中⾧期的なトータル・リターンの獲得を目指すETF」であり「 ポートフォリオの予想配当利回りは約4.0%(2023年7月31日時点)」。

運用プロセスは、「予想配当利回り」「業績動向」「増配可能性」を考慮し組入銘柄(100銘柄程度)を選定し、組入比率の決定についてはキャピタルゲイン獲得等も考慮するというもの。

出所:2084 NF日本高配当株アクティブETF 商品概要

保有銘柄上位

上場時(9月6日基準)のPCF情報における組入ウェイト上位10銘柄は以下の通り。

上場時の銘柄数は99銘柄で上位10銘柄で全体の25%。ウェイト下位銘柄は組入比率0.1%前後なのでこちらも相応にメリハリが効いたウェイト付け。

時価総額順に並べているようにも見えるが、時価総額10兆円の三井住友FG、同4兆円の日本郵政、同3兆円のMS&AD、同1.5兆円の商船三井の組入比率の差が0.6%の範囲に収まっているので単純な時価総額加重ではない。
運用プロセスには「ポートフォリオの分散・流動性・将来の株価上昇可能性を考慮し組入比率を決定」とある通り、意識してアクティブなウェイト付けをしているように見える。

なお、上位10社だけだとメガバンク2行とゆうちょ銀行があるので銀行株偏重に見えるが、これ以外の銀行株はふくおかFG(8354)だけなので銀行株は全体の10%程度。
ファンド全体では物流(海運やロジスティック関連)や建設が目立つ。商社は少し前までは高配当ファンドの基本装備だったが、上半期の株価上昇で配当利回りがかなり低下している。当ファンドにも総合商社5社は入っていない。

参考 今年の2月に書いた東証高配当株ETFの全件レビュー

所感

銘柄選択はアナリストの業績予想とクオンツの配当予測モデルを使ってシステマティックに行うが、ウェイト(組入比率)の決定は株価のアップサイド等を考慮しよりアクティブに行っていると推測する。
単純な時価総額加重ではないものの、基本的には時価総額順に並べたポートフォリオであり、高成長アクティブと比べると色が薄い印象。

ただ、これをシステマティックな高配当株指数に対するオルタナティブとして見るとやや違った景色が見えてくる。
一見すると当たり前のことが書いてあるだけの当ファンドの運用方針だが、これらのアプローチは、機械的な高配当株運用にありがちな「減配可能性がある銘柄を組入れてしまう」「株価下落でみかけの配当利回りが高くなっている銘柄を過大評価してしまう」という2つの問題に対処した結果だと思う。
すなわち、前者については市場コンセンサス等に基づく予想配当を使わずに自社アナリストの業績予想等を使うことで減配可能性がある銘柄を排除しやすくなり、後者については下落が一過性なのか構造的なイベントなのかを踏み込んで判断する余地が生まれる。

もちろん、このアプローチがうまくいくのか、もっと言えば運用会社に適切に遂行し超過収益につなげる能力があるのかは商品説明だけでは判断しにくい。積極的な情報発信か運用実績の積み上げが必要と思われるのは先に見た2083・NF高成長アクティブと同様である。

おわり 次はMUKAMやります

以上です。

どちらも野村アセットの企業調査リソースと運用担当者の判断を超過収益の源泉にしたファンドなので、運用が始まったばかりかつ運用体制に関する情報提供も限定的な今の状態では積極的に書う理由に乏しいというのが現時点の感想です。

次回以降でMUKAMとシンプレクスのファンドも見るのでご期待ください。

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