ETF 株式投資

インド株ETFから見るインド株式市場(日本で買えないiSharesのINDA)

2023年8月11日

本項では残高最大のインド株ETFであるINDAの開示を見ながらインド株式市場の特徴について解説します。
専任だったのは10年以上前ですがアジア株担当としてインド出張にも行った人が書いてます。

ムンバイのタージマハルホテル(2008年にテロがあったところ) 筆者撮影

なお、本文に詳しく書きましたが、残念ながらINDAは日本の証券会社では取り扱いがありません。そのため日本の個人投資家にとってもってもアクセスしやすいインド株ETFは東証上場ETFの1678・野村NFインド株ETFだと思います。
1678については以下の記事で詳しく解説しています。

1678については動画もありますのでぜひ合わせてご視聴ください。

インド株への注目と簡単ではない新興国株投資

2023年になってから「これからはインド株!」という言葉を見る機会が増えた。
2023年上半期のパフォーマンスがそこそこ良かった(※)のもあるが、エマージング・マーケットの筆頭である中国株が何年も冴えないためそれに代わる市場として期待されているのも大きいと思う。また、人口世界一になったたことで注目を集めやすいタイミングでもある。
※代表的な株価指数のS&P BSE SENSEX指数は年初から7月末までに+9.4%上昇

インド経済には、縮小する豊かな国に生きる日本人が羨ましがるのがだいたい揃っている。

・増加が続く14億の人口
・ヒンドゥー寺院の塔を思わせる生産年齢人口が多い人口ピラミッド
・高いGDP成長率(2022年度7.2%)
・数学教育が強くIT、AI人材を輩出

これらはいずれも私を含めた日本の現役世代が知らない世界である。

大前提として、株式運用は「人口が増加する国に投資しておけば儲かる」という単純なゲームではない
過去10年間の米ドル建てのパフォーマンスで比較すると、人口増加が継続、生産年齢人口の比率が高い、という点でインドと共通するインドネシア株やフィリピン株は冴えない。ただ、そのインド株がエマージング株式全体(IEMG)や米国を除く先進国(IEFFA)よりも堅調だったのも事実である。
本項では深入りしないが、一般的には、民主主義国家、英語話者が多い、IT産業に強いという点が新興国の中でインドを際立たせるポイントである。

INDAを見ればインド株市場の特徴がわかる

日本の証券会社ではINDAが買えない

インド株単独のETFで最大のものは米国上場のiSharesのINDA(iShares MSCI India ETF)である。
BlackRockのiSharesでMSCIのカントリー指数に連動する業界標準のプロダクトであり、直近のAUMは60億ドル($6bn)。
iSharesの国別のETFではMSCI Japan(EWJ)、MSCI China(MCHI)に続いて3番めに大きいファンドである。

ただ、残念ながらINDAを取り扱っている日本の証券会社はおそらく無い(楽天、SBI、マネックス、カブコムで非取扱を確認)。

推測になるが、この銘柄は上場取引所が米国ETFに多いNYSE ArcaやNASDAQではなくCboe BZX (オプションのCboeグループの現物株取引所。旧BATS。)なのが原因ではないかと思う。また、インド株は外国人投資家の規制が厳しいことが関係している可能性もある。グローバル株のファンドの立ち上げ時にカストディ口座の開設に時間がかかる国トップ3は台湾、インド、韓国だったりする。

脱線 昔はINPっていうインド株ETNがあってだな(アジア株担当の昔話)

INDAが設定されたのは2012年。実は筆者がアジア株専任だった頃には存在しなかったファンドである。
本文で書いたとおりインドは外国人投資家の規制が厳格な国で、当時は今よりも更にハードルが高かった。
(FII、QFI、Sub Accountの3種類あった外国人投資家規制が現在のFPI(Foreign Portfolio Investor)登録に一本化されたのが2014年のこと)

ただ当時は残高は少ないものの米国上場のETNでインドのエクスポージャーを取る方法が一応はあった。
インド株の現物に投資するのは難しいので仕組債を使うのである。
具体的には、BarcraysのiPathシリーズでiPath MSCI India Index ETN(ティッカー:INP)という商品があった(2018年に償還)。

https://etfdb.com/news/2018/04/19/trending-investors-apathetic-barclays-1-2-billion-etn-shutoff/

今も昔もインド株のエクスポージャーを簡単に提供してくれる商品はなかなか無い。

INDAはどういうETFか

日本からは買えないINDAだが、MSCI India(≒インド株式市場)の特徴やフィー水準は他のETFを見る上でのメルクマールになるため、以下ではINDAのプロファイルをまとめる。

INDAのプロファイル

名称:iShares MSCI India ETF

ティッカー:INDA

上場取引所:Cboe BZX

ベンチマーク:MSCI India Index(MSCIインド指数)
→MSCIのスタンダード指数なので、市場全体の時価総額の85%をカバー(大型株+中型株)。
2023年8月時点の構成銘柄数は115銘柄

運用残高(AUM):60億ドル(2023年8月)

経費率(Expense Ratio):0.64%

INDAのパフォーマンス

2023年7月末基準

年間ベース

iSharesのETFでは珍しくファンドとベンチマークの乖離が相応に大きい。経費率0.64%にインド株に伴う諸費用を乗せれば1%程度の下方乖離は仕方ないと思うが、2021年のように年間3%以上の乖離が発生している計算期間もあり、インド株運用の難しさが忍ばれる。
乖離要因について何かわかれば追記します。

MSCIインド指数でみたインド株式市場の特徴

以下では、INDAの組入上位銘柄とセクターウェイトを見ながらインドの株式市場の特徴を概観する。

組入上位銘柄とセクター構成

 

出所:iShares MSCI India ETF HP

セクターの構成の中で、情報通信技術(Information Technology)消費関連(Consumer Discretionary, Staples)のウェイトが大きいのは、IT立国、14億の人口という一般的なインドのイメージと一致すると思う。ただ初見だと金融(Financials)とエネルギー(Energy)が大きいのは意外ではないだろうか。

まず、エネルギーについては、個別銘柄ウェイト最上位のリライアンス・インダストリーズ(Reliance Industries)がエネルギーに分類されていることが大きい。同社はリライアンス財閥の中核企業で、石油化学を中心に、通信、小売まで手掛けるコングロマリットである。
直近のセグメント別売上高では石油化学は6割強で、残りは他の事業になっているため、11.40%がエネルギーセクターというのはその点を割り引いて考える必要がある。

金融については一発で説明できる理由は無いが、個人的にポイントだと思うのは以下の事項。

・経済が内需主導の新興国では銀行セクターのウェイトが高くなりやすい(MSCI Emerging全体でも20%程度のウェイト)

・インドは経常赤字、財政赤字の国。14億の人口に必要な消費財とエネルギーの輸入は海外向けITサービスや製造業による外貨獲得を上回り恒常的に経常赤字である。税収の不足等を背景に財政赤字も状態化しているため、これらの赤字をファイナンスする金融セクターの役割は他の新興国と比べても大きい。

・ICICI Bank(IBN)やHDFC Bank(HDB,2023年7月に住宅ローン部門のHDFCと合併)はADRが米国に上場しており、外国人投資家の需要によるプレミアムがついている可能性(根拠レス)

新興国株式の動向は、基本的に先進国の金融市場・金融政策に左右される。米国発の金融危機で米国株より売られるのが新興国株の現実。IT立国と人口大国(消費ドライバー)というオーガニックな成長が期待できる要素の裏側には、財政赤字・経常赤字を抱えるフラジャイルな大国という側面があるあることも押さえておきたい。

おわり

以上です。

次回は東証上場の野村アセットの1678(NF・インド株ETF)を取り上げる予定です。先物を使った運用スキームについても解説するのでご期待を。

 

 

SNSとブログランキング

↓のアイコンからTwitterのシェアやブログランキングのクリックをしていただけると大変励みになります!



株式ランキング

投資信託ランキング

-ETF, 株式投資
-, , ,