株価指数

東証33業種を力技でGICSに変換する方法(日本株のGICS業種分類)

2020年5月31日

本稿では、日本株で一般的な業種分類である東証33業種分類と、外国株の一般的な業種分類のGICSについて説明し、日本株のGICS分類の確認方法について解説します。
例えば、
「任天堂は東証33業種では『その他製品』に分類されるが、GICSの11業種(Level1:セクター)では『コミュニケーションサービス』に分類される」
という情報をどう確認すればよいかを見ていきます。

東証33業種とGICSの解説

東証33業種:率直に言ってクセがある

日本株の業種分類で一般的に使われているのは東証の33業種の分類です。
東証が日本の全上場株式に振っている古の時代からある分類なので、証券会社サイトの銘柄情報や日本株投信の月報・運用報告書等ではこの分類が使われています。


出所:1306 TOPIX連動型上場投資信託 2020年4月月報

この分類は率直に言ってわかりにくいです。
例えば「その他製品」という投げやりな名前の業種がありますが、時価総額ベースでは任天堂とバンダイナムコホールディングスがこの業種の7割近くを締めています。
また「石油・石炭製品」という業種がありますが、この業種には石油精製・元売りが主に含まれており、資源の上流でビジネスをしている国際石油開発帝石は含まれません。国際石油開発帝石は「鉱業」という業種に含まれます。

とっつきに難い分類ですが、見ているうちに慣れてしまうのも確かです。
この分類がわかりにくいという認識は一応業界としてもあるようで、東証はこれをくくり直した17業種の分類(TOPIX-17)も導入しており、業種別ETFではこちらの分類が使われています。

https://www.jpx.co.jp/markets/indices/line-up/files/fac_13_sector.pdf

GICS:世界標準の分類

GICS(Global Industry Classification Standard)はS&PとMSCIが定める業種分類です。
有力指数ベンダー2社が定めている分類であり、グローバルな証券業務・運用業務で常用されている分類です。
GICSは階層構造になっており、11業種の荒い分類から158業種の細かい分類まで4段階あります。この中で、一番荒い11業種の分類(セクター)か2番目に荒い24業種の分類(産業グループ)がよく使われます。

日本人投資家も実は結構な頻度でこの分類を見ています
例えば、報道される米国株の業種別騰落率はS&P500の業種別指数をもとにしていますが、これはGICS分類に基づく業種別指数です。
また、日本で設定されている外国株投信や米国上場ETFの情報開示で使われている業種分類もほとんどGICSです。

出所:1680 上場インデックスファンド海外先進国株式 2020年4月月報

一応大きな例外もあり、10年ほど前に経費削減のためベンチマークをMSCIの指数からFTSE等の指数に変更したバンガードのETFはGICSを使っていません。Vanguard ETFの業種分類が国内籍投信やiSharesと違うことに違和感を感じていた方もいるかもしれません。

GICS分類のクセと注意点については以下の記事で詳細に解説しているので、ぜひ合わせてご一読ください。当ブログの人気記事の1つです。

GICS業種分類の調べ方と特徴(2016年と2018年の変更、癖のある業種)

GICS(Global Industry Classification Standard)は、外国株でよく使われる業種分類です。読み方はギッ ...

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日本株のGICSの確認方法

前掲のGICSの解説記事でも述べましたが、S&PもMSCIも、銘柄名やティッカー(証券コード)を入れるとGICSの業種分類が出てくるようなサイトは作ってくれていません。
両社とも指数の付加価値を上げるためにビジネスとして業種分類を振っているため、無料でそこまでするインセンティブは無いのだと推測します。
そのため、個別の銘柄がGICSでどのように分類されているかは、Bloomberg Professional, Factset, Barraといった高額な課金サービスに頼らなければアクセスしにくくなっています。
米国株ですら、Fidelityのサイトのように限られたソースでしか確認できません。

とはいえ、手間を厭わなければ確認する方法はいくつかあります。
現状では、MSCIやS&Pが算出している日本株を含む株価指数やそれらに連動するファンドの開示資料から確認するのが最も正攻法だと考えています。

MSCIの算出する日本株指数の開示から確認する

MSCIは、この10年間で日本でのビジネスと日本語での情報開示がかなり増えました。
世界的なインデックス運用ブームで伝統的な指数ビジネスが拡大していることと、日銀のETF買い入れ対象に人材投資・設備投資関銘柄が含まれていることに代表されるようにESG関連のビジネスも拡大しているためです。

そのためか、日本株のESG関連指数は日本語の情報開示が比較的充実しています。
例えばMSCI日本株女性活用指数(セレクト)という指数の情報開示の中で「親指数構成銘柄リスト」という資料が公表されており、ここにGICS11業種ベースの業種が載っています。
この「親指数」は日本株の時価総額上位700社で算出されるMSCIジャパンIMIトップ700指数なので、主要銘柄のGICS業種はこれで確認できます。
「資料」⇛「親指数構成銘柄リスト」

例えば、人材紹介・人材派遣のパーソルホールディングス(2181、昔のインテリジェンス)は、「資本財・サービス」に分類されます。典型的な資本財のイメージはボーイングやキャタピラーなので意外かもしれませんが、産業向けサービスというくくりで同社のような人材紹介業やコンサルティングファームも資本財に含まれます。こじつけっぽいですが、景気サイクルごとの値動きに照らすとちょっと納得してしまいます。

全世界株ETFの開示から確認する

過去の記事でも紹介したのですが、iSharesシリーズにACWIというティッカーの米国上場ETFがあります。名前の通りMSCI ACWI(全世界株指数)に連動するプロダクトです。

この銘柄は情報開示が充実しており、日次のポートフォリオの断片をcsvで提供しているため、カントリーアロケーションやセクターアロケーションの参考として大変有用です。

株価指数の国ウェイトの確認方法(個人投資家のアロケーション向け)

本稿では、個人投資家がMSCI ACWIのような株価指数の国ウェイト(カントリーウェイト)を入手する簡便な方法を取り上げます。アセットアロケ ...

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この日次の保有銘柄のリストにもGICSの11業種(セクター)の分類が振られています。
ACWI ETFの全保有銘柄は2,300銘柄で、うち日本株は300銘柄程度です。銘柄数はMSCI女性活用指数の開示資料よりも少ないですが、こちらではより直近ベースの分類を確認できます。

おわり:転職エージェントは資本財

以上です。
日本株のGICS分類の確認方法について疑問に思っていた方の参考になれば嬉しく思います。

直接収益につながる情報ではありませんが「転職エージェントは資本財」のような興味深い気付きがたまにあります。

 

 

 

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