本稿では、個人投資家がMSCI ACWIのような株価指数の国ウェイト(カントリーウェイト)を入手する簡便な方法を取り上げます。アセットアロケーションや投資戦略に役立つと思います。
アセットアロケーションについては、最近以下の本を読みました。高額ですがそこそこ参考になりました。
指数の構成は算出会社の収益源
株価指数の構成銘柄の日次データは指数算出会社の収益源なので、誰でも見られる形態では公表されていません。
算出会社と契約するか算出会社と契約している情報ベンダーのサービスから取得する必要があります。また、月次のファクトシートのような算出会社の定期公表資料でも、構成銘柄、セクターウェイト、カントリーウェイトは上位しか明らかになりません。
機関投資家の担当者は、FactsetやDatastream経由で取得したり、Barraの分析結果で見たりすることが多いでしょう。また、上記のような高額なサービスを使うような規模ではない法人投資家は、証券会社のストラテジーレポートや運用会社からの報告資料で確認することが多いのではないでしょうか。
全世界株ETFで見よう
以上のような状況なので、個人投資家がカントリーウェイトを見る場合には、インデックスファンドの数値を近似値として採用するのが現実的だと考えています。
本稿では情報発信が充実している全世界株ETFの公表情報を見ることをおすすめします。
情報発信の熱心さは運用会社によってかなり濃淡がありますが、BlackRockとVanguardのホームページはとても充実しています。
MSCIならisharesの「ACWI US」(PortfolioタブのExposure Breakdown)
FTSEならVanguardの「VT US」(Portfolio&ManagementタブのMarket alocation)
で見るのがおすすめです。
本稿執筆時点では、掲載されているカントリーウェイトを全部足すとACWIは91%、VTは97%になります。ここまで見られば、自前で精緻なパッシブファンドを運用したい人以外は十分だと思います。
なお、isharesは保有証券の明細を日次でダウンロードできるため、エクセルで集計すればホームページ上では「Other」に分類されているものの中身も細かく確認できます。
いったんACWIのような「新興国を含む全世界」のウェイトがわかれば、「先進国のみ(World)」「新興国のみ(EM)」の場合のウェイトは逆算できます。
他のソースで見る時の注意点
最後に、ファンドの国ウェイトをみる時の注意点について述べます。
算出会社が採用する国分類と会社の設立地(ドミサイル)が異なる銘柄があります。
例えば、アリババ(ALIBABA Group Holdings, BABA US)は、MSCIやFTSEの指数における分類は「中国株」ですが、指数に採用されているのは米国上場ADRという少々珍しい銘柄です。
それだけでなく、SECへの提出資料等で分かりますが、同社の法人設立地は「ケイマン諸島」です。香港の会社が中国本土でビジネスを行ったりその逆の場合は、ケイマン諸島や英領ヴァージン諸島(BVI)に設立した会社を介する場合があるため、その一例だと思います。
運用会社によっては、月次レポートのウェイト上位国や銘柄の情報を設立地ベースにしているところがあります。より適切にベンチマークの国分類と合わせている運用会社もありますが、日系だと会社によってバラバラです。
上で挙げたACWI USとVT USのデータは、いずれも指数の分類に基づいているため、アセットアロケーションを考える上では問題ありません。
おわり
以上です。
トップダウンのアセットアロケーションで必要な情報なので、参考になれば幸いです。