株式投資

コロナショックとリーマンショック(金融危機)のスピードの比較(速く、リバーサルがない相場)

2020年3月9日

ここでは、2020年2月下旬からの世界的な株価暴落(妥当性はともかく「コロナショック」と呼びます)と、2008年のリーマンショックの相違点を取り上げます。
潤沢な流動性が資産価格を押し上げていたという点は共通ですが、調整の速度が全く異なります。
比較の観点はいろいろありますが、本稿では株価下落の速度にフォーカスして取り上げます。

この記事は3月9日の米国株のオープニングを確認したところまでですが、2月第4週から直近までの値動きについて、以下の記事で随時フォローしています。併せてご覧ください。

【3月23日米国市場まで更新】コロナショック発生からの日々の日本株・米国株市況

コロナショックで株価が急落し始めた2020年2月第4週以降の値動きをまとめておきます。 不定期で更新する予定です。 ※コメントは執筆者の主観 ...

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2007年高値からリーマンショックまでの値動き

「リーマンショック」の金融危機における位置づけ

リアルタイムで見ていた人間として、現在のリーマンショックに関する言説は2008年9月の下落にフォーカスし過ぎていると感じます。
リーマン・ブラザーズの破綻は前回の金融危機の引き金ではありません。2007年から続いていた金融不安・金融危機のハイライトです。

3分で振り返る金融危機とリーマンショック

以下は、2006年から2010年までのS&P500指数(プライスリターン)の推移です。
下落率が大きいのは2008年9月・10月ですが、2009年3月の大底に至るまで、相応の水準で下落と反発を繰り返していました。

2007年7月高値以降の、市況の山の頂上と谷の底にあたる数値を取って行くと、以下のようになります。これを眺めるだけで当時の出来事を振り返ることができます。

山/谷にあたる
日付
山/谷の
指数値
前回の山/谷
からの騰落率
2007年7月17日
からの騰落率
2007/7/171,549.37  
2007/8/151,406.70-9.21%-9.21%
2007/10/91,565.1511.26%1.02%
2007/11/261,407.22-10.09%-9.17%
2007/12/71,504.666.92%-2.89%
2008/3/101,273.37-15.37%-17.81%
2008/5/151,423.5711.80%-8.12%
2008/7/101,253.39-11.95%-19.10%
2008/8/281,300.683.77%-16.05%
2008/10/27848.92-34.73%-45.21%
2008/11/41,005.7518.47%-35.09%
2008/11/20752.44-25.19%-51.44%
2009/1/5927.4523.26%-40.14%
2009/3/6683.38-26.32%-55.89%

まず、最初の調整は2007年8月の安値です。これはいわゆる「パリバショック」で、BNPパリバが傘下の証券化商品ファンドの解約停止(凍結)を宣言したことがきっかけです。
ただ、8月安値の後は株価は切り返し、10月には高値を更新します。その後も10%前後の調整を挟みながら推移しました。
次の大きなイベントは2008年3月のベアー・スターンズの信用危機です。ここでは2007年12月の高値から15%下落しました。ただ、連銀の後押しを受けたJPモルガンによる救済合併もあり、その後は再び10%程度の反発と調整を繰り返しました。
そして2008年9月にハイライトが訪れます。リーマン・ブラザーズの破綻、リーマンショックです。2008年8月の小反発した山から10月安値までの下落率が34.5%2007年7月から2008年10月安値までの下落率は45%でした。
その後は、2回づつ反発と安値の切り下げを繰り返し、2009年3月に大底を迎えます。

自分も、リーマン・ショック時の最大ドローダウンが55%という話は良くしますが、これは決して2008年9月以降だけでもたらされたものではなく、2007年7月から2009年3月まで、2年近くかけて調整したのです。

コロナショックの速さ

3週間で▲20%調整か

今回のコロナショックについて見ていきます。
多くの参加者が、今回の相場はスピードが早いという印象を持っているのではないでしょうか。
実際に、高値からの下落率は2月28日、3月6日の時点で12%を超えました
また、執筆時点では9日の米国株式市場は場中ですが、アジア、欧州の株式市場の調整を背景に7%超下落して始まりました。仮に、2,756ポイントまで調整したとすると、高値からの下落率は18.6%です。20%が見えてきます。

日付指数値騰落率高値(2月19日)
からの騰落率
年初来騰落率
2019/12/313,230.78   
2020/2/193,386.154.81% 4.81%
2020/2/282,954.22-12.76%-12.76%-8.56%
2020/3/43,130.125.95%-7.56%-3.12%
2020/3/62,972.37-5.04%-12.22%-8.00%
2020/3/92,756(暫定)-7.28%-18.61%-14.70%

また今回の調整では、1日あたりの変動幅が大きく、2月24日から3月9日までの11日間のうち6日間(暫定)が前日比3%以上の騰落率になっているため、実際の下落率よりも心臓には悪いです。
さらに、3月第1週の米長期金利の大幅低下が投資家のリスク回避姿勢の強さの強烈なシグナルになっていることや、為替が大きく円高に振れたことで円建てで外国株に投資している投資家の損益を悪化させていることも非常に重いです。

前回の金融危機時の20%調整局面

先に挙げた前回の金融危機時の山から谷への騰落率は、おおむね10%の調整で反転しています。それ以上調整したのは2008年3月のベアー・スターンズ破綻(▲15%)と、2008年9月のリーマンショックから10月安値まで(▲34%)と、その後の2回の下落(▲25%程度)です。
雑な推論ですが、米国株の高値からの下落率が17%を超えたら市場はベアー・スターンズ破綻と同程度の調整をしたと考えられます。金融危機時はここまでに8ヶ月かかりましたが、今回の相場では明確なリバーサルが無いまま3周間でそれを達したことになります。

このスピード感にはいろいろと理由を推測することができます。12年前と比べると、SNSとスマートフォンの普及で、恐怖や不安の伝播が早くなっています。
自分も忘れがちになりますが、当時は皆が折りたたみの携帯電話を使い、デートのアポイントは携帯のキャリアメールで取り、アナログのテレビがまだ使えました。TwitterもFacebookもなく、Yahooニュースはパソコンから見るものでした。
また、トレンド(相場の方向性)やモメンタム(勢い)をフォローする自動売買の普及も調整の速さに拍車をかけています。

おわり

以上です。
正直に言うと、自分は6日までの相場は年初来では10%調整にも満たないと楽観視していたため、9日の日欧の急落は想定外でした。
長期の積立のような市場リスクファクターを収益化するものは狼狽せず続ける、それ以外のポジションは保有目的と目線を再検証するというスタンスに変わりはありませんが、20%調整のインパクトは額面通りに受け止めたいと考えています。これは騰落率で見るとベアー・スターンズ破綻と同程度の調整です。

 

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