株式投資

株価指数の算出方法による分類(算出方法、算出者、対象銘柄)

2016年9月25日

株価指数の用途について前回の記事で説明しました。
本稿では、株価指数の算出方法による分類を解説します。
 
ポイントは3点です。順を追って解説します。
  • 時価総額加重平均か単純平均か
  • 組入銘柄の対象はどこか
  • 算出者は誰か

時価総額加重平均か単純平均か

指数を見る上で最も大切な点です。
この他にも、企業のファンダメンタルズを加味した指数もありますが、ベースはこの2つの分類です。
 
時価総額加重平均
指数における各銘柄のウェイトが時価総額に比例するように算出された指数です。
2000年台以降は、日本で時価総額が最も大きい銘柄はトヨタ自動車(7203)です。
TOPIXは時価総額加重平均の株価指数なので、トヨタ自動車のウェイトが最も大きいです。
市場全体の動きを表すことが目的であれば、時価総額加重平均が最も適切だと考えられています。
 
ちなみに、現在は浮動株調整と言って、実際に市場で取引されていないと考えられる株数については、時価総額から除外して計算することが一般的です。
何をもって「浮動株ではない」部分とするかは算出者により異なります。
例えば、10%を超える大口の株主の持ち分法律に基づき政府が保有している持ち株などは、浮動株ではないと扱われることがあります。
また、航空会社やテレビ局のように、法律により外国人の保有に上限が定められている場合(FOL,Foreign Obtain Limit)があります。このような場合は、算出者によっては、外国人でも保有できる分までを浮動株として算出します。
 
単純平均
各銘柄の株価の単純平均を指数化したものです。
ただし、一株数百円と数万円の銘柄について、単純に株価で平均してしまうとウェイトがぐちゃぐちゃになってしまうので、単元(取引単位)などにより調整を行います。
例えば100株単位で取引される銘柄よりも1株単位で取引される銘柄のほうが、株価だけで見れば高水準になります。
以前は銀行株や電鉄株では、取引単位が1株単位で、株価は1株数十万円というものが相応にありましたが、それらの多くは株券電子化の際に株式分割と単元の変更を行い、株価の水準を下げ取引単位を100株単位に変更しています。
 
単純平均の株価指数の代表は日経平均とダウ30種平均です。
単純平均なので、指数の単位にもとの株価と同じ円やドルが使われます。これが分かりやすいという意見もあります。
一方で、単純平均の株価指数には難点もあります。
指数の変動が特定の銘柄の値動きに過度に影響されることがあり、市場全体を表す指標としては不適当な場面があることです。
例えば、日経平均株価で最もウェイトが高い銘柄はユニクロのファ-ストリテイリング(9983)で、2016年前半は8%程度のウェイトがありました。
このように、指数の中でウェイトが高い銘柄は値がさ株と呼ばれたりします。
一時期は、半導体製造装置(テスター)のアドバンテスト(6857)などが値がさ株として有名でした。
さて、ファーストリテイリングは誰もが知る大企業ですが、時価総額は3~4兆円です。
一方、トヨタ自動車の時価総額は概ね20兆円、日本株で次に大きいNTTドコモ(9437)の時価総額は10兆円です。
また、マイナス金利政策で苦戦しているとは言え、メガバンクもまだファストリより時価総額が高いです。
指数の中の個別銘柄のウェイトが、時価総額(≒株式市場の構成)と乖離するのが単純平均の株価指数の難点です
 
 

指数の組入対象銘柄

次に、指数が組み入れている銘柄についても注意する必要があります。
 
指数算出者は、指数のメソドロジー(算出要綱)を策定し公開していることが一般的です。
その中で、指数の対象とする銘柄群入れ替えの取扱が書かれています。
全銘柄を対象としたTOPIXのような指数以外では、時価総額や流動性などの基準から算出者が定期的に銘柄の入れ替えをする場合が多いです。
連動対象としているパッシブファンドが多く設定されている場合は、ファンドの銘柄入れ替えのための売買により、入れ替え対象となる個別銘柄の値動きに影響を与えることがあります。
 
また、指数ベンダーの算出する指数は、複数国にまたがるものがあります。
先進国、新興国、汎欧州などの分類がよく出てきます。
この場合の、先進国、新興国などの分類も算出者が定める基準で行われます。
そのため、指数によっては実感と異なったり、算出者ごとに異なる取り扱いがされている場合があります。代表的な例を2つ挙げます。
韓国と台湾とギリシャ
MSCIではEmerging Markets(新興国)韓国台湾が含まれています。
この2カ国が中国やインドと同じ分類なのはちょっと違和感がある方もいると思います。
これに対して、ギリシャはDeveloped(先進国)に分類されます。
一人あたりGDPでは、韓国と台湾の方がギリシャより高いですが、このような取扱になっています。
※算出者によっては、先進国と新興国の分類で資本市場の自由度を考慮するので、外貨規制のある台湾や外国人投資家規制のある韓国は市場が未成熟と判断されていることが一因です。
 
イスラエルは先進国か新興国か
イスラエルは株の指数(MSCI)だと先進国に分類されています。
一方、債券の指数(WGBIなど)では新興国に分類されています。
これは指数の算出者が異なるため、算出者ごとに異なる判断をしているのだと考えられます。こういったことがあるのも、次で述べる「誰が算出しているか」がに注意する理由の一つです。
 

誰が算出しているか

指数の算出者は、取引所情報ベンダーに大別できます。情報ベンダーは、新聞社や金融機関が直接算出者になっている場合と、独立系のベンダーの場合があります。独立系のベンダーも、設立の経緯を辿ると、取引所、新聞社、金融機関を母体とするものがほとんどです。

単一国の株式市場についての指数は、取引所が算出するものが一般的な指標となっている国が多いです。
日本のTOPIXやドイツのDAXは取引所が算出する指数です。
英国のFTSE100FTSEという企業が算出していますが、FTSEはもともとロンドン取引所の傘下企業でした。
日経平均は新聞社が算出する指数ですが、日本経済新聞社自体、傘下のQUICKなどを含めた情報ベンダーとしての顔を持っています。
また、ダウ30種平均ダウ・ジョーンズが算出する指数ですが、このダウ・ジョーンズはウォール・ストリート・ジャーナルの発行元です。

グローバルな株価指数で有名なMSCIはもともと証券系です。
Morgan Stanley Capital Internationalの頭文字を取ってMSCIというブランドで指数を算出し始めました。
その名の通り、モルガン・スタンレーの傘下でしたが、現在は独立しておりMSCI自体がNYSEに上場しています。

日本人投資家に重要度の高い指数

最後に、日本の投資家がにとって重要度が高い指数をいくつか解説します。
資産運用の実務では、日本株はTOPIX米国株はS&P500外国株はMSCI KOKUSAI(先進国から日本を除いたもの)かMSCI AC World ex Japan(ACWI、先進国と新興国から日本を除いたもの)がよく使われます。
いずれも時価総額加重平均の指数であり、日本の公的年金がベンチマークにしている指数です。

これらの指数は、リテール向けにも連動するパッシブファンドが多くあり、手数料率もこなれている場合が多いため、個人投資家にも有用だと考えています。

 

以上です。

 
 

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