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全然話題になってない三菱UFJFGのESG/ETNの解説(2070,2071,2072)

2020年11月26日に、三菱UFJフィナンシャルグループが運用管理するESG関連等の3つのETNが東証に新規上場します。
現在の東証ETNは野村ホールディングスの1社供給なので新規管理会社の参入ですが、これが悲しいほどに話題になっていません。

興味がある人のために、自分がETNの有価証券届出書と指数のメソドロジーを確認して気づいた事項をまとめます。

ETNの銘柄概要

今回上場する銘柄は以下の3銘柄です。

証券コード銘柄名ベンチマーク
2070スマートESG30女性活躍(ネットリターン)ETNiSTOXX MUTB ジャパン女性活躍 30インデックス
(ネットリターン)
2071スマートESG30総合(ネットリターン)ETNiSTOXX MUTB ジャパンESG 30インデックス
(ネットリターン)
2072トップシェアインデックス(ネットリターン)ETNiSTOXX MUTB ジャパントップシェアインデックス
(ネットリターン)

以下の事項は3銘柄に共通です。

ETN(仕組債)の発行者・・・三菱UFJ証券ホールディングス(MUSCHD)
JDR(信託受益権)の委託者・・・三菱UFJモルガン・スタンレー証券(MUMSS)
JDR(信託受益権)の受託者・・・三菱UFJ信託銀行(MUTB)
当初信託元本(≒当初の発行額)・・・20億円
管理費用(≒ETFにおける信託報酬)・・・年率0.85%

また、ETNのベンチマークになっている「iSTOXX MUTB~」で始まる3指数はいずれもドイツ証券取引所傘下の指数算出会社であるSTOXXと三菱UFJ信託銀行が共同算出しています(STOXXはDAX指数の実質的な算出者でもあります。)。

よって本件の3銘柄はオール三菱UFJフィナンシャルグループのETNだと言えます。

執筆時点では、特徴や上場の意図を一般投資家向けに解説しているソースはほとんどありません。
以下の東証のオウンドメディア(マネ部)に、三菱UFJモルガン・スタンレー証券による解説記事があるくらいです。
一応この記事には指数の特徴と10月末時点の構成銘柄が書かれているので有用な情報ではあります。

リンク:東証マネ部・三菱UFJモルガン・スタンレー証券の記事一覧

ETN-JDRの上場形態(ストラクチャー)

これらのETNは、JDR(Japanese Depository Receipt)方式で東証に上場します。
三菱UFJ証券ホールディングスが発行する社債を、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が委託者として三菱UFJ信託銀行に信託します。
三菱UFJ信託銀行は社債を裏付けにする信託受益権を発行し、東証にはその信託受益権が上場します。
あまり意識されていませんが、これは現存する野村グループのNEXT NOTESシリーズ(2038原油ダブルブル等)も同様のスキームです。
野村ホールディングスのオランダ法人が発行体になっているNEXT NOTESとは異なり、本件の3銘柄の社債の発行体は日本法人の三菱UFJ証券ホールディングスです。
ただ、社債は同社の欧州ミディアムタームノートプログラム(EMTN)に基づくユーロ円債として、日本国外で発行されます。

仕組みはやや難解ですが、償還等をからめずに取引所を通したトレードをするだけであれば、上場株式や投信形態のETFと同じ税制(申告分離課税・特定口座OK)が適用される商品です。

指数の詳細

以下では、3銘柄のベンチマークであるi STOXX MUTBシリーズの指数について解説します。
逐一説明するよりも、指数の全体的な構成から見ていくとイメージしやすいです。
構成銘柄は先に紹介したマネ部のMUMSSによる解説記事に載っているため、ここでは列挙することはせずに、文中に記事へのリンクを貼ります。

(前提1)STOXX JAPAN 600

まず、STOXXの日本株の標準的な指数として、STOXX JAPAN 600という指数があります。
これは、日本株の時価総額&流動性上位600銘柄からなる時価総額加重平均指数です。

(前提2)iSTOXX MUTB JAPAN QUALITY 150

STOXX JAPAN 600からREITを除外した銘柄群を、ROE、自己資本比率、キャッシュフロー獲得能力、事業継続性でランキングし上位150社を選定したものがiSTOXX MUTB JAPAN QUALITY 150という指数です。よくあるファンダメンタルズインデックスの作り方です。
この指数から30銘柄を絞り込み2070と2071の指数が算出されます。

ちなみに、三菱UFJ国際投信が運用するETFの「MAXIS JAPANクオリティ150上場投信 (1460)」のベンチマークはこれです。純資産8億円しかないため持っている人は少ないと思います。

(2070の連動対象) iSTOXX MUTB ジャパン女性活躍30インデックス

iSTOXX MUTB JAPAN QUALITY 150の構成銘柄を、女性活用に関する4つの指標(女性管理職比率、女性役員比率、保育所や育児手当、育児等の理由により離職した社員の再雇用制度)でランク付けし、ランキング上位の30社で算出します。
算出要領記載の正式な英語名称は”iSTOXX MUTB JAPAN EMPOWERING WOMEN”です。
採用銘柄を見ると、結構自分のイメージ通りでした。
生活必需品や医薬バイオが目立つ一方、金融は損害保険2社(東京海上とSOMPO)が採用されているだけです。駄目な業界です。

この指数も含めて、本件の3指数は全て時価総額加重平均でも単純平均でもなく均等ウェイトです。
30銘柄なので時価総額加重や単純平均にすると大型株や値嵩株の影響が大きくなりすぎるからでしょう。

(2071の連動対象) iSTOXX MUTB ジャパン ESG 30 インデックス

iSTOXX MUTB JAPAN QUALITY 150の構成銘柄から、軍需産業等を除きかつESGスコアが高い30銘柄で算出します。
業種のスクリーニングとESGスコアはサステナリティクスというモーニングスター傘下のオランダのESG調査会社のものを使っています。
構成銘柄を見ると、業界のトップ企業が多いだけでなく、ニトリや東京エレクトロンなど成長を続けている大企業が多く、面白いポートフォリオだと感じました。
本件の3つの指数の中で、1年、3年、5年のパフォーマンスが最も優れているのはこの指数です。

(2072の連動対象) iSTOXX MUTB ジャパントップシェアインデックス

1つ戻って、STOXX JAPAN 600からREITを除外した銘柄群の中から、市場占有率が高い事業を持つ30社以上の会社で算出します。
算出要領を見た限りでは、「シェアが高い会社」の選定は、アナリストが市場シェアを精査した数値を使うのではなく、業種分類と売上高の数字からある程度機械的に行うような記載でした。
正式な英語名称は"JAPAN MARKET SHARE LEADERS INDEX"となっています。
採用銘柄を見ると、NTT、JT、東京電力等の規制産業ゆえに高シェアの会社が相応に含まれているため、「ニッチトップの成長企業」をイメージすると違和感があるポートフォリオだと思います。

 

以上が3指数の解説でした。
文中にリンクを貼ったMUMSSの解説のほかにも、以下のリンクの"iSTOXX Index Methodology Guide"の127ページ以降にSTOXXと三菱UFJ信託の共同算出指数についての記載があるので興味がある方はあたってみてください。

指数のリターン

正直、この3商品の情報開示からはやる気が感じられません
新設の商品でも指数はかなり前まで遡って算出しているのだから、指数値とTOPIX対比のリターンを投資家向けにまとめても良さそうなものですが、発行体による情報開示が極めて限定的です。

一応、前掲の東証マネ部のMUMSSの記事にリンクがあるSTOXXのサイトに行けばそれなりの情報が得られました。
(STOXXのサイトのトップからこのページを探すのは極めて難解だったため、マネ部の記事から飛ぶことをおすすめします)
参考までに、円建てネットトータルリターン指数のファクトシートから、指数の騰落率が分かる部分の抜粋を紹介します。

この間の配当込みTOPIXのリターンは過去1年▲2.9%、過去3年▲4.0%と極めてパッとしないので、それと比べるとかなり良く見えます。

おわり:なぜETFでやらない?

以上です。
もとの指数はTOPIXと比べるとかなり良いパフォーマンスです。

一方、ETNの管理費用が年間0.85%と手数料を抑えたアクティブファンド並みに高い点が気になりました。
スマートベータ/ファンダメンタルズインデックスの商品としては強気過ぎるように感じます。
例えば、指数の詳細で触れた三菱UFJ国際投信の1460は、本件3銘柄と同様にSTOXXとMUTBの共同算出指数をベンチマークにするプロダクトですが、1460の信託報酬は年率0.24%です。
一応、東証上場のETF/ETNでは、日経平均レバレッジ&ダブルインバースや原油ダブルブルがほぼ同水準の料率です。ただ、本件の3銘柄は、これらの先物代替で使われる商品とは立ち位置が異なる商品だと思います。

また、グループ内の運用会社である三菱UFJ国際投信で投信形態のETFとして組成することも可能そうな運用内容なのに、なぜETNにしたのかが不可解という疑問もあります。
例えば、小型株が多く含まれるポートフォリオであれば、執行コストや流動性を考慮してETNにするのは理にかなっていると思うのですが、これらの指数はいずれも時価総額・流動性上位600社から選出しているため、その可能性は低いと思います。
裏側で別の商品が絡んでいるか、またはSTOXXとの提携の関係で新商品を作る必要があったのか、いろいろと妄想が捗るプロダクトです。

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