株式投資

東証の流通株式時価総額の定義変更で何が変わるか

2021/2/18

2022年4月に東京証券取引所が市場区分の再編を行います。 現行の市場第一部、第二部、マザーズ、ジャスダックの区分を再編し、「プライム」「スタンダード」「グロース」に再編する計画です。 この中で、東証が上場審査と上場廃止基準で使用する「流通株式」の定義が見直されます。 これは、2019年に実施された金融庁の審議会でも言及されていましたが、2020年12月に東証から変更後の具体的な計算方法が公表されました。 本稿ではこの「流通株式」の定義の変更について、現在の基準との違い等の観点から解説します。 東証の資料 ...

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投資信託

アセットマネジメントにおけるデューデリジェンスとは

2021/2/5

金融業界では「デューデリジェンス」という言葉が2つの意味で使われます。 もともとDue Dilligenceという言葉は「適切な注意義務を果たす」「適正な手続きを踏む」というニュアンスの言葉です。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 M&Aにおけるデューデリジェンスと資産運用におけるデューデリジェンス2 アセットマネジメントにおけるデューデリジェンスの全体像2.1 資産運用のデューデリは誰がするか2.2 資産運用のデューデリのフロー2.3 資産運用のデューデリの評価項目2.3.1 定量評価2.3 ...

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株価指数

全世界株指数にはREITが含まれているがTOPIXにはJ-REITが含まれない

2021/1/28

本稿では、世界のメジャーな株価指数はREITを含むが、日本で算出されている日経平均やTOPIXにはなぜかJ-REITが含まれていないという問題を掘り下げます。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 S&P500もMSCI ACWIもREITを含む2 TOPIXや日経平均はなぜかREITを含まない2.1 J-REITは名実ともに投資法人(ファンド)なのだ2.2 US-REITはファンドっぽくない3 おわり 青(J-REIT)は藍(US-REIT)よりも青し(Investment Trust)? S& ...

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株価指数

バリュー株指数とグロース株指数の計算方法(PBR等で分類)

2021/1/27

本稿では、バリュー株指数やグロース株指数の算出方法を解説します。 日本の投資家が指標として見ることが多い、TOPIX(東証)、ラッセル、MSCIの指数については具体的な算出方法にも触れます。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 バリュー株とグロース株2 「バリュー株指数」と「グロース株指数」2.1 バリュー銘柄、グロース銘柄、そして中間の銘柄2.2 TOPIXのバリューインデックスとグロースインデックス2.3 ラッセルのValue指数とGrowth指数2.4 MSCIのValue IndexとGrowt ...

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株価指数

時価総額世界1位のサウジアラムコは指数にどれくらい入っているか(エマージング)

2020/12/7

ちょうど1年前に、サウジアラビアの国営石油会社のサウジアラムコの上場がニュースになっていました。 この時は「時価総額世界最大!アップルやマイクロソフトを上回る!」という報道が多かったので「発行済株式の1.5%しか売り出さない銘柄を全株数ベースの時価総額で騒ぐのはおかしいでしょ」という記事を書きました。 今回はフォローアップとして、アラムコの株数が代表的な株価指数の算出でどう扱われているかをまとめます。 アラムコのMSCIの浮動株比率は1%強 最初にMSCIサウジアラビア指数を見ます。 2020年11月末ベ ...

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ファイナンス理論

ビットコインと伝統資産の相関関係(株式、債券、ゴールド、ドル)

2020/12/6

2020年11月末、米ドル建てのビットコイン価格は19,000ドルを超え、2017年末以来の最高値を更新しました。 円建てでも現在200万円近辺で推移しています。 ビットコインに限れば、2017年末から2018年初にかけて参入した出川組のほとんどを救う水準まで回復したことになります。 ※出川組⇛出川哲朗が出演するコインチェックのテレビCMが放映されていたのが、ちょうどビットコインが前回高値をつけた2017年12月頃でした。「兄さんが知らないはずないだろう!」ってやつ。 良い機会なので、ビットコインと伝統資 ...

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ETF

全然話題になってない三菱UFJFGのESG/ETNの解説(2070,2071,2072)

2020/11/24

2020年11月26日に、三菱UFJフィナンシャルグループが運用管理するESG関連等の3つのETNが東証に新規上場します。 現在の東証ETNは野村ホールディングスの1社供給なので新規管理会社の参入ですが、これが悲しいほどに話題になっていません。 興味がある人のために、自分がETNの有価証券届出書と指数のメソドロジーを確認して気づいた事項をまとめます。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 ETNの銘柄概要2 ETN-JDRの上場形態(ストラクチャー)3 指数の詳細3.1 (前提1)STOXX JAPAN ...

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ETF

時価52兆円の東証ETF市場の見取り図(ETF/ETN組成形態別の銘柄数と時価総額)

2020/11/17

東証のETF・ETN市場の2020年11月時点の時価総額はおおむね52兆円です。 興味があって組成形態(上場形態)別の銘柄数と時価残高をまとめたので本稿で解説します。 特に海外との重複上場の形態について、JDR形態のもの(UBSの欧米株関連ファンド)と非JDR形態のもの(SPY=1557やGLD=1326)に分けてまとめたものはあまり見ないので、興味がある方は参考にしてください。 東証ETF・ETNの商品形態別銘柄数および時価残高 東証上場ETFの銘柄数および時価総額別の内訳は以下の通り。 時価は複数日に ...

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ETF

東証ETF解説:1570NF日経平均レバレッジETF

2020/10/26

ネタに困ったので、東証上場ETFを順番に解説する企画を始めます。 楽天証券の買付代金ランキング・保有残高ランキングを参考に注目度が高い50銘柄を取り上げたいと考えてます。 似たようなことやってる人は多いと思いますが、仕事でファンドや運用会社のデューデリジェンス(調査)をしていた人間が書くものはあんまりないと思うので参考にしてネ。 一発目は1570日経平均レバレッジETFです。 良くも悪くも現在の日本のETF市場はこれ抜きには語れません。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 ファンド基本データ2 パフォー ...

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株式投資

ドコモのTOBで学ぶヘッジファンドのM&Aアービトラージ

2020/10/1

2020年9月30日から、日本電信電話(NTT)は子会社のNTTドコモ株式のTOBを開始しました。 本稿では、このTOBを題材にヘッジファンドの戦略の一つであるM&Aアービトラージ(裁定取引)を解説します。 TOB初日のドコモ株式の市場終値は3,885円となり、ほぼTOB価格の3,900円近辺まで上昇しました。 この差額の15円に関する取引の解説です。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 TOBの条件2 TOB価格と市場価格の乖離3 市場価格とTOB価格の乖離を取る取引3.1 M&Aアー ...

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取引・配当・コーポレートアクション

日本株の決済サイクル短縮(T+2移行)のメリットのディープな解説

以前書いたコーポレートアクションの日程に関する記事が、わりと沢山読んでいただけています。

https://in-invest.net/2018/03/06/ca01/

「落ち日より権利付き最終売買日が重要」「決済サイクルは『T+3』と言われることも『約定日から起算して4営業日目』と言われることもあるが同じ意味」という、やや踏み込んだ解説をしたのが人気の秘密かもしれません。

さて、公表時にもニュースになりましたが、2019年7月16日(火)に約定した(売買された)取引から、日本株の受渡期間(決済サイクル)が、T+2に短縮化されます

私見ですが、個人投資家が気をつけないといけないことは、権利付き最終売買日を確認する時にT+2で考えなければいけなくなるくらいだと思います。

本稿では、T+2決済のメリットと言われている事項を検討します。
日証協主催のワーキンググループとその前段にあった勉強会の報告書を読んでいくという結構ディープな内容です。

日証協のワーキンググループ

T+2決済への移行については、業界内ではかなり前から検討されていました。日本証券業協会(日証協)では、2015年から、証券会社や信託銀行などの関係者を集めたワーキンググループを作って検討しています。

http://www.jsda.or.jp/shiraberu/minasama/20150313173226.html

2016年にワーキンググループの最終報告書が発表されたのですが、この時点ではすでに「主要国がT+2にしてるから日本もやらねば」というトーンになっており、T+2決済にメリットについては特に書かれていません。

 リーマンショック等を契機とした決済リスク削減の意識の高まりもあり、海外の主要市場においては、殆どの国・地域において、株式等の決済期間がT+2化に移行している又は移行時期を決定している段階にある。こうした状況を踏まえ、我が国においてもT+2化の実現に向けた検討を行うため、2015 年7月に「証券受渡・決済制度改革懇談会」の下に「株式等の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ」(以下「WG」という。)を設置し、業界横断的に株式等のT+2化の実現に向けた具体的な検討を行ってきた。

「株式等の決済期間の短縮化に関する検討ワーキング・グループ 最終報告書」

決済期間短縮のメリットについては、2014年から日証協や東証が事務局になって開催されていた「株式決済期間短縮(T+2)に関する勉強会」の報告書まで遡る必要があります。

1.株式決済期間短縮化の実現により想定されるメリット
株式決済期間短縮化よって想定されるメリットについて検討を行い、概ね以下の4点に集約された。
1-1 決済リスクの削減
リーマン・ショックを契機に、決済リスクの削減は我が国を含め国際的な課題と認識されているところであるが、決済期間短縮化に伴う未決済残高の縮減により、以下の決済リスクを削減できる。
① 破綻時の流動性リスク
・取引相手から予定どおり資金や証券を受け取れないリスク
② 再構築コストリスク
・取引相手が決済不能に陥った場合に当該取引が持つ等価又は正の現在価値を実現できないリスク
1-2 資金効率の向上・担保負担の軽減
決済の早期化により証券・資金をさらに活用した運用等が可能となり、流動性向上が期待できる。また、昨今の証拠金規制や資本規制等の強化により、市場参加者において資金利用の効率化、証拠金等の担保負担の軽減について世界的にニーズが高まっている状況にあるなかで、株式の清算基金所要額が決済期間短縮分削減されることとなり担保負担が軽減される。
1-3 業界全体として決済事務の一層の合理化・効率化
決済期間短縮化の実現に必要な取組みを業界全体で推進することにより、業界全体として決済事務の一層の合理化・効率化を図る原動力となる。
ただし、合理化・効率化を進めるにあたっては、その必要性について十分な検討が必要である。
1-4 我が国市場の国際競争力の維持・向上
以上の効果により、我が国市場の安全性・効率性・利便性を向上させ、国際競争力の維持・確保につながることが期待できる。
また、他の主要市場がT+2決済化を目指すなか、日本のみT+3決済のままである場合、我が国市場が決済リスクの高い市場とみなされ、投資を回避されるなど、国際的地位が低下する可能性もある。
海外投資家はグローバルで決済事務を統一化するニーズがあり、日本のみ決済期間が異なることにより海外投資家の日本への投資意欲が減退する可能性もあり、国際標準に沿った決済制度を導入することで国際競争力を維持する必要がある。

株式決済期間短縮(T+2)に関する勉強会事務局「株式決済期間短縮(T+2)に関する勉強会報告書」
※太字強調は当サイトによる。

T+2移行のメリット

では、勉強会報告書で挙げられている4つのメリットを順番に検討してみましょう。

決済リスクの削減

取引が約定してから、証券と代金の受渡までの間に取引相手方が経営破綻(破産、民事再生、自主廃業等)してしまった場合は、証券やお金を受け取れない可能性があります。例えば、破産の手続に入ると、会社の資産の処分権は破産管財人に移ります。

T+3決済だと通常、当日約定分(3営業日後に決済)、前営業日約定分(翌々営業日に決済)、前々営業日約定分(翌営業日に決済)の3日分の未決済の取引が存在することになります。これがT+2決済になると当日約定分(翌々営業日に決済)、前営業日約定分(翌営業日に決済)の2日分の未決済取引だけになるので、取引相手の破綻リスクを負っている取引をへらすことができます。
これが決済リスクの削減です。

一見もっともらしいんですが、主要国の証券市場では、すでにこの手のリスクを回避するための仕組みが整備されています。いわゆるCCP(セントラルカウンターパーティ、中央清算機関)の利用です。
詳細な説明は以下の日本証券クリアリング機構のサイトを見ていただきたいのですが、CCPという機関が資金と証券の受渡債務を証券会社から一括して引き受けることで、個々の証券会社は取引相手の破綻リスク(カウンターパーティリスク)を回避できるという仕組みです。

https://www.jpx.co.jp/jscc/seisan/genbutsu/acceptance_debt/hikiuke.html

そして、証券会社は普段からCCPに証拠金を差し入れ、証券会社が破綻して受渡ができなくなった時は、証拠金によってCCPが取引を埋め合わせます。
もちろんこの場合でも、破綻した証券会社が履行できなくなった債務をCCPが処理する必要があるので、未決済の取引は減らした方が良いです。ただ、根本的な問題というより程度の問題です。

ちなみに、日本だと東証の子会社の日本証券クリアリング機構、米国だとDTCCという機関がCCPをしています。2008年の金融危機以降、上場株だけでなく、様々な金融商品がCCPを介して決済されるようになりました。現在では、金利スワップやCDSといった一部の店頭デリバティブの清算もCCPを経由しています。

資金効率の向上・担保負担の軽減

A社株の売却代金で別の銘柄を買おうとする場合、T+3だと3営業日後まで待つ必要があるが、T+2ならば2営業日後に売却代金の入金が確認できるので、早い段階で次の買い付けができる、ということです。

これももっともらしいのですが、個人投資家にはあまり関係ないと思います。そもそも頻繁にトレードする投資家は一部ですし、頻繁にトレードする人は信用取引を使うでしょう。
また、現物取引であっても、以下の説明のように、売却が約定するとその時点で買付余力に反映される証券会社が多いのではないでしょうか。(フェイル(受渡がスケジュール通りになされないこと)したらどうなるんだろう?とは思います。)

https://www.rakuten-sec.co.jp/web/domestic/stock/rule/surfing.html#skip1

https://www.okasan-online.co.jp/jp/stock/beginner/study01-05.html

機関投資家でも、日本株はフェイルを気にせず、受渡日には当然に売却代金が入ってくる前提で売買している場合が多いように思います。
外国株だと、フェイルがそこそこあるので、売り買い同時に発注する時は売りを多めにしたりファンドのキャッシュに余裕をもたせるという話も聞きます。

従って、決済期間の短縮化が投資家の資金効率に資するかというのは個人的には疑問です。報告書の後段で言われているCCPに差し入れる保証金が減らせるというのはその通りだと思います。ただ、これは投資家ではなくブローカーのメリットです。

業界全体として決済事務の一層の合理化・効率化

これはよく分かりません。
決済サイクルを短縮化すれば、時間がタイトになった分、皆効率的に仕事するだろうという暴論に見えます。

我が国市場の国際競争力の維持・向上

結局これなのだと思います。
2017年に米国がT+2決済に移行したことから、現在T+3決済の国は世界の中で浮いた存在になりつつあります。アジア先進国でずっとT+3仲間だったオーストラリアは2016年に、シンガポールも2018年12月にT+2決済に移行してしまいました。
報告書の「他の主要市場がT+2決済化を目指すなか、日本のみT+3決済のままである場合、我が国市場が決済リスクの高い市場とみなされ、投資を回避される」というのは大袈裟に感じますが、グローバルなマンデート(MSCI ACWIやEAFEベンチマーク)で資金を運用する投資家にとっては、現実問題として決済サイクルが揃っていた方が考慮すべき事項が減ります。

おわり

以上がです。
これがきっかけで何かがすごく変わるわけではないですが、オペレーションや取引の規格は多数派に合わせた方が有利です。
いち投資家としてT+2移行応援しております。

 

 

  • この記事を書いた人

ton

2007年から運用会社や金融機関の運用部門で株を中心に見てきました。 現在は運用業務からは離れていて運用は自己資金のみ。 投信の請求目論見書や指数の算出要領からプロダクトの中身に迫るのが好き。

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