取引・配当・コーポレートアクション

【T+2対応版】株のコーポレートアクションの日程(基準日、落ち日、権利付き最終売買日)

2018年3月6日

2019年11月追記
2019年の7月からT+2決済に移行したため、一部記載内容を改めました。
 
本稿ではコーポレートアクションの日程に関する言葉の説明をします。

コーポレートアクションと権利の付与

コーポレートアクションというのは、会社が株主に権利を付与したり、株主の権利の変更を行う行為のことです。
日本だと会社法などの法律で手続きや効力が定められています。
ざっくり分類すると以下のように分けられます。

株主に権利を与える行為:配当、新株無償割当、新株予約権無償割当(いわゆるライツ・オファリング)
会社の組織を変更する行為(組織再編行為):合併、株式交換、株式移転、会社分割
株式の内容を変更する行為:株式分割、株式併合

権利の確定までには、基準日、権利付き最終売買日、権利落ち日といったタイミングが出てきます。以降では、それぞれの日の意味を解説します。
 
配当金の例で解説しますが、株式分割で新株をもらう場合や合併や株式交換の対価(存続会社の株式など)をもらう場合も同じような考え方が出来ます。
 
※2019年7月から、日本株の決済サイクルがT+2に短縮化されました。本稿では、T+2のサイクルに基づいて記載します。
T+2決済への移行について、日証協の報告書を見ながらネットリ解説した記事がこちらなので、よろしければ併せてご覧ください。

基準日

会社法では、株式会社は一定の日を定めて、その日時点の株主にコーポレートアクションの効果が発生するという取り扱いをします。
この「一定の日」が基準日です。
条文を載せておきましょう。
会社法
(基準日)
第百二十四条 株式会社は、一定の日(以下この章において「基準日」という。)を定めて、基準日において株主名簿に記載され、又は記録されている株主(以下この条において「基準日株主」という。)をその権利を行使することができる者と定めることができる。
2 基準日を定める場合には、株式会社は、基準日株主が行使することができる権利(基準日から三箇月以内に行使するものに限る。)の内容を定めなければならない。
3 株式会社は、基準日を定めたときは、当該基準日の二週間前までに、当該基準日及び前項の規定により定めた事項を公告しなければならない。ただし、定款に当該基準日及び当該事項について定めがあるときは、この限りでない。
4 基準日株主が行使することができる権利が株主総会又は種類株主総会における議決権である場合には、株式会社は、当該基準日後に株式を取得した者の全部又は一部を当該権利を行使することができる者と定めることができる。ただし、当該株式の基準日株主の権利を害することができない。
5 第一項から第三項までの規定は、第百四十九条第一項に規定する登録株式質権者について準用する。
 
株主総会と中間・期末の配当金の基準日は定款で決めておいて、それ以外のコーポレートアクションをする時はその度に基準日を設定して公告するようにしている場合が多いです。
(例えば、3月末決算の会社だと、3月31日を株主総会と期末配当金の基準日、9月30日を中間配当金の基準日として定款に定めるというもの。)
基準日の取り扱いで紛らわしいのは
①基準日を決める時は土日祝日を考慮しない
②一方、その日までに株の受渡が終わっていないと株主名簿に載らない
③そのため、基準日が土日祝日の場合はその前営業日が実質的な基準日になる
ということです。
 
実務だと、基準日は土日祝日を考慮せずに、月末の日が指定されることが多いです。
定款の期末配当の書き方だと「毎年3月31日の最終の株主名簿に記載の株主」というようになっています。
また、株の取引は会計上は約定ベースで考える必要がありますが、法律上の権利をを考える場合は受渡ベースで判断します。
株主名簿に記載されるのは、基準日までに受渡が完了した投資家の名前だからです。
決済について詳しく話すと非常にマニアックになるのですが、国内の取引所で上場株の売買をすると、証券会社などの口座振替で株と売買代金の受渡(決済)が行われます
金融機関を通じた振替決済なので、土日祝日はお休みです。
従って、基準日が土日祝日の場合は、その前営業日が実質的な基準日(基準日以前に最終の受渡が行われる日)になるわけです。
上に挙げた2020年3月のカレンダーのように月末が平日の場合は問題ありませんが、例えば、3月31日が日曜日の場合は、その直前の営業日である3月29日金曜日が「実質的な基準日」になります

権利付き最終売買日

「落ち日」の方が言葉としてはよく使われるのですが、投資家の権利を考える上では「権利付き最終売買日」の方が重要です。
これは、取引所で株を売買して、基準日までに受渡を終えられる最終の営業日のことです。
日本だと、取引所で現物株の取引をすると、約定日の2営業日後に受渡が行われます。
これは、単純に見えてわかりにくい使い分けがされています。
トレードの説明だと「T+2決済」と言われます。
T(約定日)の翌日から数えて2営業日目に受渡がされるということです。
一方で法律や規則だと「売買の日から起算して3日目(休業日を除く)」というような書き方がされます。
東証の業務規程や、外務員必携(証券外務員試験のテキスト)はこの書き方だったと記憶しています。(実際私が読んでたのはT+3時代でした。)
Tの日を含む3営業日ということで、T+2と言ってることは同じです。
上で挙げた2020年3月のカレンダーだと3月31日(火)が基準日なので、土日を考慮して3月27日(金)が権利付き最終売買日になります。
3月27日に買った投資家は月末が基準日の配当金を受領できますし、同日に売った投資家は配当金を受領できません。
 

権利落ち日

権利付き最終売買日の翌営業日です。
この日以降に約定した取引は受渡が基準日より後になるので買った方に権利がつかなくなる日です。
上に挙げたカレンダーだと3月30日が3月末基準日の権利落ち日です。
3月30日に取引された分は4月1日に受渡がされるので、3月30日に買った投資家は3月末の配当を受領できず、売り手が配当を受け取る権利を持ちます。
配当利回りに注目する投資家が多い会社の株(電力、通信など)は、権利落ち日になると、配当金額分だけわかりやすく下がることがあります。
また、配当を含まない株価指数だと、ウェイトが高い銘柄の配当落ちが集中する日(まさに3月末と9月末の落ち日)は結構な下げ圧力なるので、ニュースのコメントでも「期末の配当落ちで~~」という説明がされます。
 

まとめ

基準日:この日までに受渡が終わっている株について、配当などの権利が付く
権利付き最終売買日:取引所で取引する場合に、基準日までに受渡が完了する最終の取引日
落ち日:権利付き最終売買日の翌日
 
こういう分野はオペレーションの仕事として金融機関の中だと軽視されがちなんですが、コーポレートアクションと受渡(決済)は最終的には法律の話になるので、結構奥が深い分野だと考えてます。
ご参考になれば嬉しいです。

SNSとブログランキング

↓のアイコンからTwitterのシェアやブログランキングのクリックをしていただけると大変励みになります!



株式ランキング

投資信託ランキング

-取引・配当・コーポレートアクション
-,