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Appleとテスラの株式分割の注意点(Record Date≠日本株の基準日)

時価総額世界最大のAppleと、時価総額世界最大の自動車メーカーのテスラが2020年8月に株式分割を行います。

報道では、Appleの株式分割は「8月24日が基準日・分割後ベースの取引は8月31日から」と書かれています(テスラは8月21日が基準日・分割後ベースの取引は8月31日)。

ただ、この報道で見る米国株の株式分割の「基準日」(Record Dateの訳)は、日本株の株式分割における「基準日」と同等のものではありません。
本稿では、上記2社の株式分割の留意点と日本株との相違点について解説します。

 

結論を言うと、
・アップルの24日(テスラ21日)のRecord Date(基準日)は特に意味がある日ではない
・投資家が証券口座で株数の増加が確認できるのは(最速でも)米国28日夜以降
・31日以降に
分割後の株価と株数で取引が始まる
これだけ覚えておけば問題ありません。

Apple株式分割のスケジュール

Appleの株式分割については、同社のIRページにわかりやすい解説があります。


以下は、重要な期日の説明と、取引に関する注意事項の抜粋です。

The Record Date – August 24, 2020 - determines which shareholders are entitled to receive additional shares due to the split.
The Split Date – August 28, 2020 - shareholders are due split shares after the close of business on this date.
The Ex Date – August 31, 2020 - the date determined by Nasdaq when Apple common shares will trade at the new split-adjusted price.

What happens if I buy or sell shares on or after the Record Date and before the Ex Date?
If you sell shares on or after the Record Date (August 24, 2020) but before the Ex Date (August 31, 2020) you will be selling them at the pre-split price. At the time of the sale, you will surrender your pre-split shares and will no longer be entitled to the split shares. Following the split, the new owner of the shares will be entitled to the additional shares resulting from the stock split.

If you buy shares on or after the Record Date but before the Ex Date, you will purchase the shares at the pre-split price and will receive (or your brokerage account will be credited with) the shares purchased. Following the split, you will receive (or your brokerage account will be credited with) the additional shares resulting from the stock split.

出所:Apple Inc. IR

かいつまんで意訳すると以下のとおりです。

本件の重要な日付
8月24日(月) Record Date
この日時点の株主に、分割による新株を受領する権利が与えられる
8月28日(金) Split Date
この日の終了時点に、分割後の新株が有効になる
8月31日(月) Ex Date
NASDAQ(取引所)でApple株が分割後の株価で取引されるようになる

Record DateからEx Dateの間(24日から28日)に売買したらどうなる?
この間は、分割前の株価での取引になる。この間に売った株主は28日終了時点に分割の新株は受領できず、買った株主は分割の新株を受領できる。

結局、日本の報道で「基準日」と訳されている「Record Date」は取引上特に意味がある日ではなく、28日(金)の終了時点に分割が有効になり31日(月)から分割後の価格での取引が有効になるということです。

想像が入りますが、2009年の株券電子化で完全ペーパレス化されている日本の上場株式とは異なり、米国の上場株式は一応券面が存在し、券面を集中決済機関であるDTCに預託することで不動化していることと関係しているように思います。
すなわち、法的に分割新株を受け取れるのはあくまで24日の株主だが、実質的にはDTCが全て持っているのでこのようなシームレスな取引が可能なのだろうと推測しています。

投資家の証券口座の情報はいつ更新されるか

投資家の口座に分割による株数増加が反映されるのは最速でもSplit Dateの取引終了以降です。
日本の証券会社から買っている日本の投資家の場合は、29日・30日・31日日本時間のどこかで反映され、31日の米国時間から新株の売却が可能になるはずです。
例えば、楽天証券の米国株のコーポレートアクション情報を見ると、通常は権利落日(Ex Date)当日から割当株式が売買可能になっています。


出所:楽天証券HP(2020年8月24日20時時点)

ただ、本件のアップルとテスラはまだ新株の売却可能予定日が空欄です。
おそらく、同社が委託している米国のカストディアン(現地保管機関)から新株受領のフィード(報告)を受けるまで確約できないためでしょう。トラブルが無ければ週末か31日の日本時間に更新されるはずです。

日本株の株式分割との違い

株式分割のスケジュールは、完全にペーパレス化されている日本株の方がシンプルです。
基準日を決めて基準日終了時点の株主に分割の効力が及ぶと決議します。
基準日までに受け渡しが終わる売買は分割前の株価、基準日までに受け渡しが終わらない売買は分割後の株価で取引されます。
東証はT+2決済なので、基準日の2営業日前までは分割前基準日の前営業日(分割落ち・新株落ち日)からは分割後の株価での取引となります。

例えば、日本最強のディフェンシブグロース銘柄である神戸物産(3038)が2019年10月に行った株式分割は以下の日程でした。
① 基準日公告日 2019年10月17日
② 基準日 2019年10月31日
③ 効力発生日 2019年11月 1日
10月31日は木曜日だったため、分割落ち日は前営業日30日になり、同日から分割後の株価で取引されました。

ここで、日本株の基準日と米国株のRecord Dateを同じものと考えるとよくわからなくなります。
日米ともに「分配落ち日(≒Ex Date)からは分割後の価格で取引される」と考えるのが最もシンプルな理解です。

おわり:米国株米国株米国株

以上です。
日本人がこんなに米国の個別株を持つ時代がくるとは10年前は考えられませんでした。
参考になれば嬉しく思います。

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