経済指標・マクロ

株価もISM指数(景況感、PMI)も先行指標だから注目されている

年末年始の米国の株式相場は、引き続き値動きが荒い展開が続きました。

年末年始のS&P500

 終値騰落率
2018/12/312,506.850.85%
2019/1/22,510.030.13%
2019/1/32,447.89-2.48%

要因としては、アップルが2017年第4四半期の業績があんまり良くないという事前情報を公表したことと、ISM製造業景気指数が市場予想よりも悪く、前月からの下げ幅も2008年以来の大きさだったことです。

今日はISM指数の説明と、経済指標の分類について書きます。

 

ISM製造業景気指数とPMIの説明

アンケートで作られるISM指数

ISM製造業景気指数は、全米供給管理協会(Institute for  Supply  Managementのイニシャルを取ってISMです)が発表する指数です。最近はヤフーファイナンスでも見れるので便利です。

https://info.finance.yahoo.co.jp/fx/marketcalendar/detail/9011

細かいことですが、日本語訳は「製造業景況感指数」「製造業景況指数」「製造業景気指数」で媒体によって表記ゆれがあります。私は打ちやすいからこだわりがなければ景気指数と書いています。

ISM指数は、米国の製造業の購買担当役員にアンケートを取って作ります。
アンケートの内容は
生産、新規受注、入荷遅延比率、在庫、雇用といった項目について、前月より「良い」「同じ」「悪い」を回答してもらいます。
アンケート結果を指数化したものがISM製造業景気指数です。50を超えていれば景気拡大、下回れば景気縮小と見られます。

1月2日に発表された統計では、アンケートの全ての要素を加味した「総合指数」が54.1であり、前月の59.3から5ポイント以上低下していました。また「新規受注指数」も51.1と前月の62.1から大きく下落したことも注目されています。

このように、ISM指数は製造現場にいる人の見解に基づいています。いうなれば景況感(景気の感じ方)を指数にしています。そのため、景気の先行きをいち早く示す可能性が高いので注目されているのです。

ちなみに、ISMは非製造業を対象へのアンケートから集計する「ISM非製造業景気指数」も算出しています。相応に注目されいる指標ですが、1997年から集計し始めた比較的新しい統計なので、単に「ISM」といったら製造業景気指数を指す場合が多いです。

ISMと同じような作り方をするPMI

ISM指数のような、企業の購買担当者やそれに類する責任者へのアンケートをもとに作成されている指数はPMI(Purchasing Manager's Index)と言われます。そのまま検索するとプロジェクトマネジメント協会やポスト・マージャー・インテグレーション(会社が合併したあとに、実際に業務などを統合していくこと)が出てくるので、「PMI index」 や「PMI指数」で検索すると便利です(アイが重複しますけどネ)。
新聞やニュースサイトの経済指標カレンダーを見ていると、いろいろな国でPMIが発表されているのが分かると思います。

日本では、日銀短観の業況判断DIがかなり近いです。アンケート対象を購買担当役員に限定しているわけではないですが、企業に「良くなった」「変わらない」「悪くなった」でアンケートに回答してもらい集計します。

中国では現地メディアの財新と英国の調査会社のマークイットという会社が製造業PMIという名称で公表しています。昔は財新ではなくHSBCと出していました。

ドイツでは、日銀短観に相当するifo景況感指数や、民間の調査会社が集計するZEW景況感指数があります。

このような作り方をする経済指標をまとめて「PMI系の指標」とか「景況感系の指標」と言ったりもします。

先行指標、一致指標、遅行指標

経済指標の読み方の本を見ていると出てくるのですが、経済指標は「先行指標」「一致指標」「遅行指標」に分類されます。

株価や今回説明したISM指数などのPMI系の指標は先行指標です。

内閣府が「景気判断総合指数」を作成するときの分類のいくつかを紹介します。

  • 先行系列・・・長短金利差、東証株価指数、中小企業売上見通しDI、鉱工業生産在庫率指数、新規求人数等
  • 一致系列・・・鉱工業生産指数耐久消費財出荷指数、大口電力使用量等
  • 遅行系列・・・常用雇用者数、失業率、家計消費支出等

市場で取引されるものの価格、景況感、在庫などは景気に先行し、生産量や販売量は景気に一致し、雇用者の減少は最後に起こると考えると、結構実感に近いのではないでしょうか。

現在の市場では先行指標である株価がかなり調整しています。その中で景況感も落ちてくると、次は生産や消費にも影響が出てくるのではないかということで、株売につながりやすいです。
ちなみに、米国の雇用統計(非農業部門雇用者数変化)は、FRBが政策判断の基礎にしているので為替市場では毎回お祭りになりますが、指標としては「雇用者数」は遅行指標になります。景気の先行きを見通す上では重要度はあまり高くないと考えています。
(ただ、米国は雇用に流動性があるため、一致指標とみなして良いのではないかという指摘もあります。)

○○○

景気サイクルの終わりに株価が下がると、「実体経済は良いのになぜなんだ?」という気分になります。それは、株価は多様な市場参加者の取引の結果ですので、景況感と同様に、実体経済(生産や消費)よりも先を見て動くからです。
そして、株価が下落するとそれが景況感に影響を与え、生産や消費にも影響を与えて行きます。ある意味これは、「株価が下がったから景気が下がる」という自己達成型の予言なのかもしれません。
(伝説的な投機家のジョージ・ソロスが言及する「再帰性」という考え方も、市場の自己達成型の予言が背景にあるように思います。)

 

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ここもとの変動を受けて、比較的長期の目線で保有しているポートフォリオを見直すのであれば、以下の記事が参考になると思います。(無料です)

https://note.mu/in_invest/n/nd15e320f2278

数字についてフォローすると、12月の騰落率は日経平均はマイナス11.5%、S&P500(円換算)はマイナス12.2%です

 

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