投資信託

資金循環統計の誤りは私募投信のせい

前回、日銀の資金循環統計で、家計の投信保有残高が大幅に下方改定された件について書きました。

前回の投稿:日銀資金循環統計の家計の投信保有額の下方改定(誤り?):拡散の経緯と実態https://in-invest.net/2018/07/24/fund_stat01/

毎日新聞記事:
 
ファンド投資に関わった経験から少々思う所がありましたので、少し掘り下げて書きます。
先にまとめると、
・金融機関が保有する投資信託には、国内籍公募投信、国内籍私募投信、外国籍ファンドがある。
・国内籍の投資信託の残高全体から、金融機関が保有する国内籍公募投信と国内籍私募投信を適切に控除するのは有価証券報告書などの公表情報からだけだと難しい。
ということを述べます。

公募投信だけから家計の保有残高を推計しない理由

今回の下方改定の原因は、ゆうちょ銀行、信金中金、信用金庫等の金融機関が保有する投資信託の残高が「家計の保有」に含まれていたことでした。
これらの金融機関が投資信託を保有するのであれば、国内籍ならば適格機関投資家私募の投資信託、外国籍であれば欧米で組成されたファンドの機関投資家用のクラスか、オフショアのセパレートアカウントを使うと思います。
(セパレートアカウントは信金では難しいかもしれませんが信金中金とゆうちょ銀行の運用規模ならやってると思います。)
これらの金融機関の保有分が全体の残高から控除されていなかったことが原因だったということは、資金循環統計において投資信託の全体の残高としているのは、国内で設定されている私募投信を含む投資信託の総額ということになります。
 

公募投信だけの数字から大雑把に推計してみる

家計が保有する投資信託の残高を推計するだけならば、公募投信だけを対象にしたほうがシンプルに計算できたと思います。
例えば、投信協会は月次で「投資信託の全体像」という統計を算出しています。
https://www.toushin.or.jp/statistics/statistics/data/
 
協会員である委託会社(運用会社)の報告をもとに作っているので、精度はかなり高いと思います。
直近の2018年6月末の計数は以下の通りです。
(見難くなていまいましたが、主要な数字は、公募投信121兆円のうち10兆円がREIT等で残り111兆円が証券投信。証券投信のうちETFが34兆円で、追加型株式投資が64兆円、MRFが12兆円。)
 
ここからざっくりと、個人が保有する投資信託の残高を推計してみます。
私募投信はほとんど適格機関投資家私募だと思うので最初から外します。
◎公募投信(REITとETF含む)の残高121兆円を母数として
・日銀の保有するETF 24兆円
・MRFは実質的に証券会社への預け金なので除外 12兆円
・REIT(9兆円)のうち半分弱はファンド等の保有と仮定 4兆円
・日銀保有以外のETF(10兆円)のうち3割くらいは法人等の保有と仮定 3兆円
これらを控除すると、78兆円になります。
そして、法人が資産運用として公募投信を購入しているのがどの程度か皆目検討がつかないのですが、78兆円のうち1割くらいがそういった法人による保有額だと仮定します。
そうすると70兆円程度が個人投資家の投信の保有残高なのではないかと推計できます。
これは改定前(103兆円)よりも改定後(73兆円)に近い数字になります。
 

資金循環統計の目的と難しさ

もっとも、資金循環統計は、国内の資金異動と金融商品の保有状況を、企業、家計、政府といった主体別に包括的に見るためのものです。
その目的に照らせば、投資信託の母数に私募投信も含めたのは適切だと思います。
これを除外すると法人(特に金融法人)の資産状況が不正確な数字になります。
ただ、この母数から金融機関の保有分を適切に控除するというのが結構複雑な処理になっているのでしょう。
ゆうちょ銀行の直近の有価証券報告書では「その他の証券ーうち投資信託」が39兆円と開示されていますが、これは国内籍と外国籍のファンドを合わせた数字の可能性があります。
この数字をすべて金融機関の保有としてしまうと、母数には含まれていない外国籍投信の分も控除してしまう可能性があります。ただ、そこのところの正確な判断は有報の数字だけではできないのです。
 

○○○

金融法人の私募投信の利用は個人的にとても興味のあるトピックだす。
それにしても統計は難しいですね。
 
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