投資信託

公募投信のトラッキングエラーはあてにならない

2018年4月19日

こちらの記事で、トラッキングエラーという指標について解説しました。

この記事では、公募投信のトラッキングエラーはオフィシャルには公表されず、また、見つかったとしてもあまり参考にならないことが多いという話題を取り上げます。

トラッキングエラーは重要だが表に出てこない

インデックスファンドの評価では、通常はトラッキングエラーが最も重要なポイントです。
インデックスファンドのベンチマークに対する超過収益率がたまたまプラスだったとします。投資家は結果としては儲かりますが、インデックスファンドとしては悪い事態です。ベンチマークに追随出来ていないからです。実感に反するかもしれませんが、トラッキングエラーの小ささがインデックスファンドの良し悪しを決めます
こんな重要な数字であるにも関わらず、公募投信のトラッキングエラーの数字は①なかなか手に入らず、②手に入ったとしてもあまりあてになりません

私は以前、外部の運用会社に運用委託しているファンドを管理する仕事をしていたので、インデックスファンド選びではトラッキングエラーが超重要なんだということを割と若いうちに知りました。
しかし、自分が資産運用のために投信を買おうとした時は困りました。
国内の公募のインデックスファンドでは、トラッキングエラーの数字を把握することが困難だったからです。運用会社のホームページなどを確認しても見つかりませんでした。私は結局、トラッキングエラーを確認することを断念して、

  1. 販売手数料がノーロード
  2. 信託報酬が比較的低い
  3. 信託財産留保額が納得できる水準
  4. ベビーファンド、マザーファンドともにそれなりに規模が大きい

という基準で選びました。そう大きく失敗しなかったと思います。

トラッキングエラーはどこで見れるか

今回記事を書くにあたって、ファンドのトラッキングエラーの数字がどこで見れるかを改めて確認しました。

まず、法定開示書類(金融商品取引法で開示・交付が義務付けられている書類のこと)ですが、
・交付目論見書
・請求目論見書
・交付運用報告書
・運用報告書(全体版)
いずれにも記載がありません
また、
・月報
・運用会社ホームページ
のような自主的な情報開示にも書いてないです。
ファンド評価会社ならどうかと考えモーニングスターのサイトも見てみたのですが、ここにもありません。

それらしい数字を見つけることが出来たのは、楽天証券のファンド情報のページでした。

https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/detail/?ID=JP90C00055X2

運用会社から一般向けの開示が無いことを考えると、楽天証券が自前で計算しているのかもしれません。だとしたらさすが大手ネット証券です。

 

公募投信のトラッキングエラーがあてにならない理由

さて、上の楽天証券ホームページのリンク先は「SMT グローバル株式インデックス・オープン」のページです。私も積立で買っていました。

管理人がどういう投信を買ってるか

ページの下の方にあるトラッキングエラーの数字を見るとが2%を超えています(執筆時)。セパレートアカウント(特金や外国籍投信を活用して特定の投資家のみのために運用されるファンド)だと許されないレベルです。
ただ、これはこのファンドが特別ひどいわけではなく、日本の公募投信だとトラッキングエラーはかなり大きい数字が出てきてしまうのです。その理由をご説明します。

配当金

一つは配当金です。
投信の基準価額(NAV)ベースでトラッキングエラーを計算すると、ファンドの側の収益率はファンドが受け取った配当金を含んだものになります。ファンドが配当を受領する権利が確定した時点(権利落ち日)で基準価額に反映されるからです。
これに対して、日本の公募のインデックスファンドの中には、配当を含まないプライスリターンの指数をベンチマークにしているものがけっこうあります。
指数算出会社(証券取引所やMSCIなど)は、配当金の影響を含めて計算した指数も算出しています。配当込みTOPIXやMSCIのTotal Return Indexです。
機関投資家向けのファンドやセパレートアカウントは配当込みの指数をベンチマークにしていますが、公募だと会社やファンドによって一貫していないです。

信託報酬などのコスト

ファンドの内側でかかっている費用もトラッキングエラーの要因になります。
ファンドの基準価額は、信託報酬やファンドが保有する証券の取引手数料、外国証券管理のためのカストディーフィーが控除されています。これらのコストは当然ベンチマークの指数には入っていないので、トラッキングエラーの要因になります。
機関投資家向けのファンドだと、パッシブファンドのような差別化が難しい商品はボリュームディスカウントが効いてフィーが低く抑えられるのですが、公募だと低コストの商品でもそれなりの手数料が取られるので影響も相応に出てきます。

為替の時点

海外の資産に投資するファンドだと、計算に使う為替レートの差異も結構大きな要因になります。
国内籍の投資信託だと、外貨建ての資産は基準価額算出日のTTM(銀行が10時ごろに決める対顧客為替相場の仲値)で円換算して基準価額を算出します。

これに対して、指数算出会社はもっとグローバルな為替レートで算出しています。例えば、MSCIはロンドン時間午後16時時点の為替レート(ロンドン・フィキシング)の為替レートを使います。従って、MSCIがドル建てで算出した指数を、一日ずらして日本のTTMで円換算したものを基準価額と比較しようとすると、使っている為替がバラバラになります。おそらく、BarraやFactsetのようなプロ向けのサービスだと、ファンドの保有資産のデータをもとに同じ為替レートで計算しているのだと思います。

おわり

上に挙げたような理由で、個人的には公募投信のトラッキングエラーの数字はあまり参考にしてません

最もスッキリするのは運用会社がトラッキングエラーとその内訳(手数料要因、為替要因、配当金要因、税金要因、売買要因など)を出してくれることだと思います。機関投資家向けのファンドだとそういう説明をしているはずです。
ただ、トラッキングエラーはゼロに近ければ良いという分かりやすい指標なので、開示しても文句を言う人が増えるだけだと思います。悲観的なのですが今後もそういう数字が個人投資家向けに出てくることは無いでしょう。

初めにご紹介した、私が選んだときの基準は今でも実用的だと考えていますので、よろしければ参考にしてください。

「儲からない式」インデックスファンド選びのコツ
・販売手数料がノーロード
・信託報酬が比較的低い
・信託財産留保額が納得できる水準
・ベビーファンド、マザーファンドともにそれなりに規模が大きい

以下の記事では、基準価額とベンチマークの指数から自分でトラッキングエラーを計算する方法をご紹介していますので、是非あわせて御覧ください。

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