株式投資

新興国市場(エマージングマーケット)の歴史:さようなら発展途上国、こんにちは新興国

2018年2月14日

本稿では、エマージングマーケット(新興国市場)の歴史について解説します。
新興国とは、経済発展の途上にあり、将来の成長余地が高い国を指します。
日本人である我々からすると、中国、インドあたりをイメージしておけば大体あってます。
投資対象として新興国市場と言う場合は、新興国にある企業の上場株式(エマージング株式)や、新興国の政府や企業の発行する債券(エマージング債券)のことを指します。
危なそうなイメージもありますが、投資対象としてはメジャーな分野です。
特にエマージング株式は、確定拠出年金の商品ラインナップに含まれていたり、バランスファンドの資産配分に入っていることも多いです。
先にまとめを書いておきます。
・新興国(エマージングカントリー)とは、経済発展の途上にあり、将来の成長余地が高いと考えられている国のこと。
・新興国市場(エマージングマーケット)は、ラテンアメリカ(メキシコなど)が発行するドル建て債券の市場から始まった。
・2000年台以降の新興国市場は、BRICsを中心とした、人口増加や資源価格上昇の恩恵を受ける国がフォーカスされていた。
 

発展途上国と新興国

私が中高生だったころは「発展途上国」という言葉が教科書で使われていました。
先進国を意味するDeveloped Countryの対義語としてのDeveloping Countryを発展途上国と訳したのですね。
これに対して、新興国はEmerging Countryの訳です。
Emergeは「出現する」「現れる」という意味で、単に発展途上なだけではなく、高い経済成長が進行しており、将来的にも高い成長が続く可能性があるというニュアンスを含んでいます。
実際には、新興国と発展途上国の明確な区別があるわけではありません。
ただ、これから述べるように、「新興国」という言葉は、先進国の政策や証券会社のレポートから生まれた、マーケティング的な色彩の濃い言葉だということは覚えておいた方がよいと思います。
 

エマージング・マーケットの歴史

資本取引の歴史では「相対的に発展途上だが勢いのある地域に投資すれば、成熟した市場よりも高いリターンが得られる」という考え方は古くからあります。
近代的な株式会社の始まりと言われるオランダやイギリスの東インド会社は、アジア市場における貿易・支配を目的とした、紛うことなきエマージング関連銘柄でした。
(もっとも、当時の東インド会社の実態は、国王の勅許のもとで軍事力を有し植民地の管理運営を行う国家の出先機関に近いものでした。)
アメリカ大陸の「発見」以降、ヨーロッパ人にとってアメリカ合衆国は長いあいだ新興国であり新世界であり、多くの移民や投資家を集めました。
サマセット・モームの長編小説「人間の絆」では、イギリス人の主人公フィリップが、南アフリカ関連銘柄への投機により資産の大部分を失う場面があります。
 

エマージングマーケットの誕生

エマージング・マーケットという言葉が使われるようになったのは1990年前後です。
1980年台の世界的な高金利と一次産品の値下がりにより、中南米を中心とした発展途上国は、対外債務(外国からの借入)の返済が困難になりました。
1989年に、米国の財務長官であるニコラス・ブレイディはこの問題に対応するため、発展途上国が担保付きの米ドル建て債券を発行し、既存の債務を借り換えることを提案しました(ブレイディ・プラン)。
これに基づいて、第一号のメキシコを皮切りに、中南米、アジア、東欧の国々が、既存債務の借り換えのために多様な債券(ブレイディ債)を発行し、それが機関投資家の間で取引されるようになりました。
また、債券が取引対象となったことに合わせて、これらの国の株式も機関投資家の投資対象になりました。
証券会社は、これらの発展途上国の証券の取引をする部署を、エマージング・マーケッツ・デスクとかエマージング・マーケッツ・チームと呼ぶようになりました。
2000年以降にマーケットの仕事を始めた人間からすると意外なのですが、エマージング・マーケットはもともと、ラテンアメリカの債券から始まったのです。
 
その後、エマージング・マーケットは、各国の政変や90年代後半のアジア通貨危機やロシア危機など、激しい浮き沈みを経て推移します。
この過程でジョージ・ソロスの伝説的なリターンやLTCMの破綻など、現在にも語り継がれるエピソードが生まれました。
 

BRICsブームとBとRの脱落

2000年台に入ると、ゴールドマン・サックスがBRICsという造語(ブラジル、ロシア、インド、中国の頭文字)を掲げ、新興国の成長を予測します。
(言葉の初出は2001年のようですが、注目されたのは2003年発行の「Dreaming with BRICs」というレポートだと言われています。)
原典を読む機会は無かったのですが、この時期のBRICsを見る視点は、中国とインドは豊富な人口による内需中心の経済発展ブラジルとロシアは資源価格の上昇による恩恵というストーリーでした。
この頃から、日本の公募投信においても、新興国にフォーカスしたものが増加しました。
1998年のロシア危機をボトムに新興国市場が右肩上がりで上昇していたことや、エネルギー・資源価格が上昇基調だったことから、2008年の金融危機まで、エマージング株は先進国株を上回るリターンをあげます。
しかし、下落局面における調整も大きく、2008年には、エマージング株は指数ベースで53%下落します(先進国株は41%下落でした)。
2009年には先進国を上回るスピードで株価が回復したものの、それ以降は堅調な米国株を中心とした先進国株と比べると、エマージング株のリターンは劣後していました。ただ、足元の2年はエマージング優位です。
私見ですが、BRICsは、BとRは2010年ごろには訴求力を失っていましたが、IとCは浮き沈みがありながらもまだストーリーが生きていると考えています。
 

まとめ

図にすると以下のようになります。
エマージングマーケットの歴史
 
 
 
以上です。
エマージング株は私自身とても思い入れのあるアセットクラスです。
ご参考になれば幸いです。

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