株式投資

日銀利上げと米景気悪化で日経平均はどこまで下がるか?(2024年8月3日稿)

2024年8月3日

本稿では、当面の日経平均の下値目処をどのくらいに見ておけばいいかを検討します。当サイトでたまに使う簡単なPERとEPSのマトリックスを使います。簡便な試算なのでそのま取り入れるのではなく状況整理の叩き台として使ってもらいたいと思ってます。
(2024年8月2日基準)

8月19日追記 2週間経過後の答え合わせ

本稿執筆後の日本株は、8月5日に日経平均が前日比▲12.4%という歴史的な大暴落となるも、翌6日には+10.4%急反発。その後に発表された米国の経済指標がソフトランディングを期待させる内容だったことから13日の週にかけても値を戻し、16日には終値ベースで日経平均3万8,000円を回復した。

この間の日経平均の最安値は5日の31,156円12銭だったので、本稿のワーストシナリオ30,000円程度という想定はそこそこいい線行っていたと思う(PERがサポートとして機能したとは言い難いけど)。ただ、2番底を見に行くとは思わないまでもしばらくは経済指標やイベント(ジャクソンホール会議、NVIDIA決算)を睨んで神経質に揉み合うような想定だったので、この切り返しの速さは想定外ではありました。

植田ショック?急速な円高進行と日本株安

2024年7月31日の日銀の+0.15%の利上げと会見でのタカ派的なスタンスを受け、金融市場では急速な日本株安と円高回帰が発生している。

為替

ドル円は7月11日の市場予想を下回る米CPIの発表以降161円から154円程度まで円高が進行していたが、31日の日銀金融政策決定会合と同日米国時間のFOMC(9月利下げがほぼ確実視)を受けて150円近辺まで下落。その後も予想を下回る米経済指標や株安を受けて8月2日の米国時間では146円50銭まで円高が進行した。

直近高値の161円から146円50銭までの下落率は▲9%に達し、1ヶ月未満の間に急速な円高回帰が発生したことになる。

日本株

株価についても、7月31日の金融政策決定会合当日こそ日経平均は+1.5%で取引を終えたものの、続く8月1日は▲2.5%、2日は▲5.8%と2日連続の大幅安となった。特に、2日の下落幅は▲2,216.63円と歴代2位であった(象徴的な数字だが水準が高くなっていることには留意)。

2日の日経平均先物の夜間取引では、予想を下回る米雇用統計を受けて米国株共々大幅下落し、34,800円で週内の取引を終えている。

期近の9月限の先物の配当影響は小さい(2月・8月決算企業は225銘柄中10社もない)ため、この値はほぼ現物日経平均そのままだと考えて良い。
8月1日▲2.5%、2日▲5.8%、2日夜間▲3.1%の下落とであり、この期間の下落率は▲11%に達した。また7月高値の42,224円から34,800円までの下落率は▲18.5%に達する。1ヶ月未満の出来事である。

PERを使った下値の検討

以下では、日経平均の今期予想PERを使いシンプルな下値の検討を行う。

足元の日経平均のPERは年初の水準まで調整したが・・・?

以下は、2024年に入ってからの日経平均の今期予想PERの推移である。

2種類のPERがあるがより注目すべきは指数ベースのPER(太いオレンジ線)である。

※加重平均ベースは日経新聞の市況欄や日経電子版に掲載されている目立つ数字だが、これは構成銘柄の(時価総額合計/純利益合計)で算出した指数と乖離したものである(時価総額加重されている)。詳しくは以下の記事を参照。

抑えておきたいPERとEPSと株価の水準は以下の通り。

日付日経平均予想PER予想EPS
2024/1/4(年初)33,288.2919.941,669
2024/3/22(PER最大)40,888.4324.091,697
2024/7/11(最高値)42,224.0223.561,792
2024/8/2(現物終値)35,909.7019.561,836
2024/8/2(先物夜間)34,80018.961,836

※EPSは日経平均÷PERで算出。8/2(先物夜間)は先物終値を予想EPS1,836で割って算出

2日の現物終値ベースでは年初と同水準、先物夜間取引の34,800円ベースでは年初の水準以下であり、相応に調整が進んでいると見ることもできる。

だが、これは予想EPSが不動であることを前提にしている。足元の予想EPS1,836円は年初の1,669円から+10%増加しているが、急速な円高回帰米景気悪化懸念(ソフトランディングで済まない可能性)を考慮すると、下方修正を警戒すべき状況になっていると思う。

極端な例を出すと、2008年から2009年の世界金融危機では、リーマンブラザーズが破綻した2008年10月に日経平均のPERは10倍まで低下した。だが、株価が同サイクルの最安値をつけた2009年3月にはPERは300倍に達していた。全ての産業で業績下方修正が進んだ結果、PERが機能しない水準まで日経平均の予想EPSが下落してしまったのだ(今回の下落がリーマンショック級だとは今のところは考えていない)。

また、株安が景気悪化・業績悪化の自己成就型の予言となることも往々にしてある。

予想PER×EPSのマトリクスで下値目処を占う

以下は、横軸にEPS縦軸にPERの数字を置き、交差する場所がその水準の株価(PER×EPS)となるように作成したマトリクスだ。中央赤色の34,770円が8月2日夜間先物の水準で、PER19倍/EPS1,830円となっている。

まず、EPSを1830円で固定して、縦軸のPERの変化を見る。オレンジ色が参考になりそうな水準である。

19倍・・・現在の水準かつ2023年10月の安値と同じ水準。今年の年初よりも低い水準であり、ここまでのリバーサルで十分と考えるなら先物夜間取引の35,000円弱はいったんの下値目処になる。

16倍・・・ロシアのウクライナ侵攻が発生した2022年3月の水準。通常時の日経平均のPERレンジ15倍から25倍の下限でもある。ここまで想定するなら30,000円割れの水準も覚悟しなければならない。
(自分はこのあたりを下限に想定してます)

13倍(コロナショック)・10倍(リーマンショック)・・・それぞれ24,000円、18,000円と悶絶するような水準である。ただ、過去10年の予想PERは平均18.4、標準偏差2.6なので、平均から2標準偏差で13倍に届く。リアリティが無い水準とは言い切れない。

(表外)24倍・・・今年の高値圏(7月上旬や3月)

残念ながら私はこれを作ってるうちに「これだけ下げてもまだ19倍かぁ」とどんどん弱気になっていった。

また、EPSの水準も見ると、足元から-10%下方修正すると1,647円で、これは2024年初と同水準である。円安の反転と米景気悪化で祭りが終わり、EPSは年初の水準まで減少、PERも過去10年平均の18、19倍まで縮小する、と見るならやはり30,000円前後が目処になりそうである。

日経平均のEPSについては、

円安影響を除くとほとんど伸びていないという刺激的な話があったり

米国のISM製造業景気指数に追随すると言われるため

今は楽観ではなく慎重に見るべき局面かもしれない。

7月ISM製造業は46.8まで低下

おわり

「高値から▲18%も下落したんだから底打ちは近いだろう」と思って作り始めましたが、下落前のPERが思いのほか高くどんどん弱気になりました。とりあえず私は30,000円くらいまでの下値余地はあるものとして慎重に考えてます。

材料がない時に手がかりになるのはテクニカルと掛け算だと思ってます。

日経平均のPERは公式の情報開示で2004年まで遡れるようになっています。指数算出者の社会的責任を果たす積極的な開示姿勢であり敬意に値します。
(それに引き換え東証JPX総研が算出するTOPIXや東証REIT指数はiPhoneの株価アプリで指数を確認することすらできない

日経平均プロファイル ヒストリカルデータ

https://indexes.nikkei.co.jp/nkave/archives/data?list=per

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