投資信託

米ドルMMFの徹底解説(仕組み、買うべき人、利回りとポートフォリオ情報の見方)

2022/9/27

本稿では米ドル(USD)建てMMFの特徴と、利回りやポートフォリオ構成等の情報の見方について解説します。 2022年9月の利上げで米国の政策金利であるFFレートは3.00%-3.25%のレンジまで上昇。 短期の資金にも十分な利息が付く環境です。 「MMFとはなんぞや」というところからネチネチ始めるので目当ての情報のみ見たい人は目次を活用してください。 2022年10月3日 「(追記)利上げの10日後に日興とGSのMMF利回りが逆転した理由」(目次4.3)を加筆しました。 目次(クリックで各項目にジャンプ) ...

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ETF

債券ETFの見方・買い方の解説

2022/9/13

本稿では、債券ETFを買う際に、ファンドの利回りやデュレーション等の指標をどのように見るべきかを解説します。 以下のような債券ETFの開示の見方につながるので、 「『金利が上がれば債券価格は下がる』ことは知っているが、いざ運用会社の債券ETF(AGG、SHY等)のページを見ても値動きのイメージがわかない」 という方はぜひ読んでみてください。 出所:BlackRock HP(SHY) 2022年9月11日時点 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 はじめに:利回り上昇で注目されるが債券は難解1.1 金利のあ ...

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ETF 株価指数

QYLDとカバードコール戦略の理解を深める【元カバコファンド担当者による】

2022/8/13

本稿では米国上場ETFのQYLDと同ファンドの戦略であるカバードコールについて解説します。 QYLDは米国で2021年に大ブレイクしたETFで、日本でもソーシャルメディア等でよく話題になっています。 後述しますが運用会社の日本現地法人が大和証券Gとの合弁であるため、キワモノの割に日本語での情報発信が比較的充実しているファンドです。 自分は公募のカバードコール投信の担当をしていたことがあるので、本稿ではGlobal X Japan公式や先駆者のブログより深い内容に迫れるよう務めたい。 目次(クリックで各項目 ...

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経済指標・マクロ

GPIFが運用しているのは私達の厚生年金保険料ではない(GPIFと厚生年金のよくある誤解)

2022/8/2

本稿では、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の厚生年金制度における位置づけについて解説します。 2017年頃からGPIFの情報開示は格段に良くなり、ソーシャルメディアで話題になることも増えました。 その一方で、以下の事項を誤解している人も多いので、このような記事を書きたいとずっと思っていました。 GPIFと厚生年金に関するよくある誤解 ・GPIFは我々の給与から毎月源泉徴収されている厚生年金保険料を運用している→✕ ・GPIFの運用の成否は現役世代の将来受け取る年金の金額に大きく関係する→✕ 目次 ...

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株式投資 取引・配当・コーポレートアクション

株主総会で株主に送付される書類のこれまでとこれから

2022/6/26

2022年9月の改正会社法の施行で株主総会資料の電子提供制度が導入される。これを受けて、2022年6月に多くの上場会社の株主総会で同制度を採用するための定款変更が諮られる。 ※この改正は2019年に成立し、本件以外の改正は2021年3月にすでに施行されている。実務への影響の大きさから1年半遅れての施行となっている。 ※電子提供制度の採用が強制の上場会社については、施行日を効力発生日として定款変更手続きをしたとみなされる強力な経過措置が設けられているが、みなし規定の対象にならない取り扱いもあるため、実際には ...

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経済指標・マクロ

JGB7年債と債券先物(7年債連続指値オペの意義を理解するために)

2022/6/18

本稿では「残存7年の日本国債は長期国債先物と密接な関係にある重要な債券である」ということを解説します。先物の受渡適格銘柄、CF、チーペスト等のトピックを取り上げます。 日銀が連続指値オペの対象に7年債を加えたことの重要さを理解する一助となれば嬉しく思います。 ※自分は基本的に株の人なので本稿のために改めて調べた内容も含まれることにご留意ください。一応ヘッジファンドのデューデリをしたり友人に債券の仕事をしている人がわりといたりと、間接的な関わりはありました。 日銀がYCCの国債の買入対象に残存7年の債券も加 ...

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取引・配当・コーポレートアクション

株主総会シーズンを真面目に楽しむための知識

2022/6/9

株主総会は株式会社の最高意思決定機関です。とはいえ、フルタイムで働いている現役世代が株主総会に参加することは容易ではありません。多くの方は、招集通知を一読する程度の時間しか割いていないと思います。 (議案を精査して議決権行使している個人投資家が本稿をご覧になっていたら身が引き締まる思いです。あなたのような真面目な投資家がコーポレートガバナンスを担っています。) 本稿では、6月の株主総会シーズンを楽しむための知識をまとめます。やや雑多になりますが、株主総会関連の報道や会社からの送付物の理解に役立てば嬉しく思 ...

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ETF

時価総額の大きな日本株ETFの決算日のまとめ

2022/5/6

2022年5月現在の基準で、時価総額(純資産総額)が大きな日本株ETFの決算日の一覧を掲載します。 日銀がETF購入を開始(2010年)してから、度重なる購入規模増額(2013年、2014年、2016年)と、コロナ相場下での積極的な購入(2020年)を背景に、TOPIX型・日経平均型ETFの残高は過去10年間で急拡大しました。 そして、規模が大きなETFの決算のタイミングでは、ETFの分配金対応を意識した売買が見られるようになりました。 東証上場ETFの決算日一覧を掲載しているソースは数多あるが、上記の観 ...

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株式投資

「2021年末を100にして指数化」というチャートはどう作っているか

2022/5/4

複数銘柄を比較する株価チャート等では「〇〇=100として指数化」と書かれているものがある。 例えば、以下はニッセイ基礎研究所が公表している月次の経済動向レポートのもの。 出所:ニッセイ基礎研究所 世界各国の市場動向・金融政策(2022年4月) 株価そのものではなく、基準時点(〇〇)の水準を100にした相対株価を使うことで価格帯が異なる複数銘柄の比較を容易にするためのテクニックだ。 筆者はこの処理を株式運用の部署に配属されて2日目に知った。 初見だと何をしているかイメージしにくいかもしれないので、本稿ではこ ...

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取引・配当・コーポレートアクション

配当金額が非表示(アスタリスク***)の配当金計算書が届く理由を法的根拠を示して解説

2022/5/2

日本の上場株式を保有していると、配当金支払い時に「配当金計算書」が郵送される(東証上場ETFなら「分配金計算書」)。 本来は重要な書類なのだが、配当金の支払い方法に株式数比例配分方式(証券会社受け取り)を選択していると、税引き後の支払金額が******(アスタリスクで埋まっておりブランク)の計算書が届くため、初見だと困惑するかもしれない。 ※著者撮影。「株式数」「配当金額」「株主番号」は筆者にてマスク(微妙な数量で恥ずかしいため) 「配当金計算書 アスタリスク」で検索すると信託銀行(証券代行)や証券会社の ...

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株式投資

パナソニックのテスラ株売却がすぐに報じられなかった理由(IFRS包括利益の罠)

2021年6月25日、パナソニックが同社が保有するテスラ株式を2021年3月末までに全売却していたと報じられました。
パナソニックは2010年にEV用電池事業に関する関係強化を目的としてテスラ株を取得しており、当初の取得金額24億円に対し、今回の売却額は4,000億円程度と報じられています。
テスラは昨年からのコロナ相場で話題の中心となった銘柄の1つであり、本件は大いに注目されました。また、25日のパナソニック株は前日比4.9%と大幅に上昇しました。

ただ、このタイミングでこの報道が出ることにやや引っかかるものはないでしょうか?
同社は5月10日に決算発表(決算短信)をしていますが、そこから1ヶ月以上経過してから本件が報じられました。
ここには、金商法・会社法のスケジュールと、IFRSの包括利益の取り扱いが絡んだ論点があると思いましたので記載します。

25日にTwitterに書いた内容に肉付けしたものとなります。

※6月27日追記
日本基準の包括利益計算書における含み損益の取り扱いで理解が不十分だった箇所があったため、
(決算発表時に話題にならなかったのは「包括利益」ゆえ)ー(IFRSと包括利益計算書の罠)
の記載を一部修正しました。

ソースは有価証券報告書(金商法と会社法のスケジュール)

今回の報道のソースは、6月25日にパナソニックが提出した有価証券報告書です。
有報では、同社が事業上の関係強化を目的に保有している株式の時価の明細が開示されています。

出所 : パナソニック株式会社 第114期有価証券報告書

2020年3月期末に809億円だったTesla株の保有残高が、2021年3月期末には"-"になっています。

有価証券報告書がこのタイミングで提出されるのは金商法会社法の要請によるものです。
金融商品取引法では、有価証券報告書の提出義務がある会社は、事業年度終了後3ヶ月以内に確定決算に基づく有価証券報告書を提出するよう定められています。
そして、株式会社の決算は株主総会の承認によって確定しますが、会社法では事業年度終了後3ヶ月以内に定時株主総会行うよう定めています。
ゆえに、3月決算会社の株主総会と有価証券報告書の提出は6月下旬にセットで行われます。

決算短信の段階でわかっていたこと

では、このことが決算発表の段階で注目されなかったのはなぜでしょうか。

パナソニックは、2021年5月10日に決算短信を公表しています。
改めて説明すると、決算短信とは、証券取引所の有価証券上場規程に基づき上場会社が決算情報を開示する資料です。
金商法ではなく取引所規則に基づくディスクロージャーであり、決算期末から45日以内に開示するよう定められています(45日ルール)。
有価証券報告書と異なり、監査法人の監査が完了する前に公表提出される速報ベースという位置づけですが、投資家は速報性のある短信に注目します。
日本企業の決算発表イコール決算短信の公表と考えて差し支えありません。

実は、テスラの名前が出たのは有価証券報告書ですが、数字は決算短信でも確認できます
例えば、短信の連結キャッシュフロー計算書では「持分法投資及びその他の金融資産の売却及び償還」として、4,300億円ものキャッシュイン・フローが発生していることが確認できます。

出所 : パナソニック株式会社 2021年3月期決算短信

これについて、同社の決算説明会でセルサイドのアナリストが内訳を質問していますが、会社側は「ポートフォリオの見直し」以上の回答はしていませんでした。
(説明会のQ&Aは音声のみですが同社HPのIR情報に掲載されています。)

決算発表時に話題にならなかったのは「包括利益」ゆえ

損益計算書にはテスラの売却益がない

このように、テスラと明言されなかったものの大規模な資産売却があったことは決算発表の時点で数字として出ていましたが、報道では全くと言っていいほど話題になりませんでした。
例えば、以下の記事は5月10日の決算発表時のものですが、ヘッドラインの通り「売上高7兆円割れ」「純利益は△27%減益の1,650億円」というどんよりしたトーンです。

実際に、損益計算書(PL)を確認してみましょう。

出所 : パナソニック株式会社 2021年3月期決算短信

うん、報道のとおりですね。
感覚的には、営業外に投資有価証券の売却益が出てきそうですが、このPLにはそれらしきものがありません。
24億円で買って4,000億円で売却できたことはここからは伺い知ることができません。

IFRSと包括利益計算書の罠

カギは、パナソニックがIFRS(国際会計基準)採用企業だということです。

現在の上場会社の決算では、日本基準でもIFRSでも、BS(貸借対照表)、PL(損益計算書)、CF(キャッシュフロー計算書)の財務3表に加えて、包括利益計算書(Statement of Comprehensive Income, CI)が作成されます。
自分の雑な理解では、保有目的が「その他」の投資有価証券(政策株や長期の純投資)の時価変動、為替変動、ヘッジ取引等に関わる損益が、この包括利益計算書に出てきます。

「その他有価証券」という投げやりな名前の超重要な資産については過去に自分も解説を書いています。

では、包括利益計算書を見てみましょう。

出所 : パナソニック株式会社 2021年3月期決算短信

2021年3月期の「純損益に振り替えられることのない項目」ー「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産」2,962億円にのぼり、前年度より大きく増加しています。
これが本件のテスラ株の売却益に相当すると推測できます。

この項目は実はBSには反映されています。

2021年3月期の同社の利益剰余金は前期の1兆6,000億円→2兆1,000億円に増加していますが、これは当期純利益を大きく上回ります。
株主資本変動計算書(SS)を見ると、「その他の資本の構成要素」から利益剰余金に4,000億円が振り替えられており、先のテスラ株の売却益がPLを経由せずにBSに反映されていることが確認できます。

出所 : パナソニック株式会社 2021年3月期決算短信

この取扱が罠なのは、日本の会計基準とは似ているようで結末が決定的に異なるからです。
政策株や持ち合い株のような、関係強化を目的として保有する投資有価証券は、日本の会計基準でも保有中の時価変動による未実現損益はPLには反映させず、包括利益計算書とBSの純資産の部に現れます。
ただ、このような有価証券を売却した場合、日本の会計基準では実現した損益はPLに反映されます
一方IFRSでは、有価証券の分類によっては、売却時に実現した損益もPLには反映されず、包括利益計算書の中で完結するのです。FVOCIのリサイクリングの禁止と言いますが、本件もこれに該当するためPLに出ないのでしょう。

ココはかなり難解なポイントだと感じます。
本稿の執筆にあたり専門家の解説もいくつか目を通しましたので、参考になったサイトのリンクを貼っておきます。

 

おわり:ファンダメンタルズ分析のエッジとマイケル・バーリ

以上です。

決算短信の時点でも資産売却による大規模なキャッシュインフローと利益剰余金とキャッシュの増加が開示されていたものの、PL上の利益ではなく包括利益だったため、あまり注目されなかった。
有価証券報告書で明細が公表されて始めて気がついた投資家(とメディア)が多かった。

というのが本件の経緯だと推察します。

パナソニックの株価は5月10日の決算発表後2週間ほど軟調に推移し、その後に反発に転じました。この2週間が市場が本件を理解するまでにかかった時間だと考えて差し支えないでしょう。

関係強化を目的とした有価証券の保有から大きな利益が出たことは確かに本業の収益とは関係ないかもしれません(これがまさに包括利益の意義です)。
とはいえパナソニックが24億円で入手した株式を4,000億円で売却し、その資金を今後成長分野に投資できることは事実なので、今回は多くの投資家が会計基準のギャップに惑わされたのではないでしょうか。

本件を見ていると、パッシブ(インデックス)、クオンツ、AIが着目される昨今においても、財務諸表を紐解くファンダメンタルズ分析には依然としてエッジがあると気付かされます。
マイケル・ルイスの名作「The Big Short」(邦題:世紀の空売り)には、医師免許を持つヘッジファンドマネージャーのマイケル・バーリが登場します。
The Big Shortのテーマは住宅ローン担保証券のショートですが、バーリはもともとは10-k(米国の有価証券報告書)を丹念に読み込む株式投資家でした。

 

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