株式投資

ドコモのTOBで学ぶヘッジファンドのM&Aアービトラージ

2020/10/1

2020年9月30日から、日本電信電話(NTT)は子会社のNTTドコモ株式のTOBを開始しました。 本稿では、このTOBを題材にヘッジファンドの戦略の一つであるM&Aアービトラージ(裁定取引)を解説します。 TOB初日のドコモ株式の市場終値は3,885円となり、ほぼTOB価格の3,900円近辺まで上昇しました。 この差額の15円に関する取引の解説です。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 TOBの条件2 TOB価格と市場価格の乖離3 市場価格とTOB価格の乖離を取る取引3.1 M&Aアー ...

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株式投資

iOS14の株価ウィジェットの注意点と暫定的な対処(表示銘柄数が減る)

2020/9/20

日本時間の9月18日頃から、iPhoneの最新OSであるiOS14にアップデート可能になりました。 目新しい新機能はいろいろありますが、株価ウィジェットの仕様に注意が必要だと感じたので記事します。 一応当ブログは「iOS 株価 TOPIX」で検索すると最上位近くにあらわれるiOS株価ウィジェットのオーソリティサイトです(大言壮語)。 銘柄数が減る(最大12銘柄⇛6銘柄に) iOSの株価ウィジェットは歴史的に、 純正の「株価アプリ」のウォッチリストに登録した銘柄を上から順にいくつか表示する という挙動をして ...

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取引・配当・コーポレートアクション

みずほFGの事例で株式併合と単元未満株と端株を解説

2020/9/19

みずほフィナンシャルグループが、2020年10月1日付けで10対1の株式併合を行います。 本稿では、株式併合の注意点について本件を題材に解説します。 「単元未満株式の取り扱い」「端数の処理代金」「なぜ会社は株式併合をするのか」についても解説します。 目次(クリックで各項目にジャンプ)1 株式併合とは1.1 会社法の規定1.2 みずほFGの併合のスケジュール2 株式併合の論点2.1 単元株制度との取引所の売買単位2.1.1 会社法における単元株式制度2.1.2 単元株数と売買単位のリンク2.2 端株の取り扱 ...

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株式投資

ソフトバンクのオプション取引のニュースを理解するためだけのオプションの解説

2020/9/6

2020年9月4日、米国株が主力ハイテク銘柄を中心に調整するムードの中、ソフトバンクグループのオプション取引の報道が世界中に流れました。 もとの報道は英Financial Timesです。 www.ft.com  2 usersSubscribe to read | Financial Timeshttps://www.ft.com/content/75587aa6-1f1f-4e9d-b334-3ff866753fa2News, analysis and comment from t ...

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ETF

バンガード日本撤退の国内個人投資家への影響

2020/8/28

2020年8月26日、大手運用会社のバンガード・グループが日本市場からの撤退を発表しました。 JP  5 users米バンガード、日本と香港から撤退へ 中国本土に重点https://jp.reuters.com/article/vanguard-hongkong-exit-idJPKBN25M1A0米資産運用会社バンガード・グループは26日、日本と香港から撤退すると発表した。香港上場投資信託(ETF)の取り扱いも中止する。 翌27日に日本法人であるバンガード・インベストメンツ・ジャパン ...

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株価指数 取引・配当・コーポレートアクション

ダウ工業株30種平均の計算方法(算出要領の概説や日経平均との違い)

2020/8/26

ダウ工業株30種平均の算出方法を具体的に解説します。 計算方法にフォーカスして、算出者のS&Pダウ・ジョーンズインデックス社が公表するメソドロジー(算出要領)の相応に深いところにも言及します。 その代わりに「1896年に12銘柄で始まった」等の定性的な情報は本稿では取り上げません。すでに巷に溢れていますので。 ちょうど2020年8月末にアップルの株式分割(ウェイト大幅低下)と象徴的な銘柄入替えを控えているため基本を見ておくには良い機会だと思います。 参考:2020年8月31日基準の銘柄入替え IN ...

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取引・配当・コーポレートアクション

Appleとテスラの株式分割の注意点(Record Date≠日本株の基準日)

2020/8/24

時価総額世界最大のAppleと、時価総額世界最大の自動車メーカーのテスラが2020年8月に株式分割を行います。 報道では、Appleの株式分割は「8月24日が基準日・分割後ベースの取引は8月31日から」と書かれています(テスラは8月21日が基準日・分割後ベースの取引は8月31日)。 Bloomberg.com  4 usersアップル、1対4の株式分割発表-株価400ドルに迫る大幅上昇でhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-07- ...

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ファイナンス理論

Excelによるアセットアロケーションの最適化計算

2020/7/31

本稿では、教科書的なアセットアロケーションの最適化計算をEXCELで行う際のアプローチについて解説します。 全世界株、米ドル建債券、ゴールドの3資産のケースを例に、EXCELのソルバー機能を使って最小分散ポートフォリオとシャープレシオ最大化を計算します(効率的フロンティアは今回は無し)。 実際に手を動かして「最適化」と言っても快刀乱麻を断つようなソリューションではなく、インプットする数字や最適化指標の選択に大きく左右されるものだという実感を持っていただければ嬉しく思います。 目次(クリックで各項目にジャン ...

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ETF

ETFの換金売りはなぜ7月上旬なのか(ETFの決算分配金のフロー)

2020/7/15

7月上旬の市況コメントには「ETFの換金売りが重石」というコメントがよく出てきます。 例えば以下のロイターの7月7日の記事には、 JP〔マーケットアイ〕株式:日経平均は下げ幅拡大、ETF分配金の換金売りを警戒https://jp.reuters.com/article/tokyo-stx-idJPL4N2EE10N<13:15> 日経平均は下げ幅拡大、ETF分配金の換金売りを警戒 日経平均は下げ幅を広げ、前場の安値に接近してきた。目新しい売り材料はないものの、8日と10日に指数連動型ETF(上場投信)の分 ...

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取引・配当・コーポレートアクション

伊藤忠のファミマTOBに見るインデックス運用の時代

2020/7/9

2020年7月8日、伊藤忠商事は子会社のファミリーマート株式のTOBを公表しました。 TOB成立後に少数株主をスクイーズアウトし伊藤忠の100%子会社とし、最終的にファミリーマート株式の4.9%をJAグループ(JA全農と農林中金)に譲渡する事業再編計画の一環として実施します。 これに関して、伊藤忠の適時開示に目を通したところ、 「TOBの下限株数の決定には、ファミリーマート株式のパッシブファンドによる保有が30%見込まれることを考慮した」 という旨の記載があります。 インデックス運用の普及と日銀のETF買 ...

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取引・配当・コーポレートアクション

伊藤忠のファミマTOBに見るインデックス運用の時代

2020年7月8日、伊藤忠商事は子会社のファミリーマート株式のTOBを公表しました。
TOB成立後に少数株主をスクイーズアウトし伊藤忠の100%子会社とし、最終的にファミリーマート株式の4.9%をJAグループ(JA全農と農林中金)に譲渡する事業再編計画の一環として実施します。

これに関して、伊藤忠の適時開示に目を通したところ、
「TOBの下限株数の決定には、ファミリーマート株式のパッシブファンドによる保有が30%見込まれることを考慮した」
という旨の記載があります。

インデックス運用の普及と日銀のETF買入という稀な金融政策を実施している現代日本の金融市場の姿を写す興味深い内容だと感じました。
本稿では、TOBでパッシブファンドの保有分をどのような観点で考慮したのかという点と、なぜパッシブ運用者はTOBに応募しないのかを解説します。

2019年のヤフーによるZOZO株のTOBの時に、日本の金商法に基づくTOB規制と投資家の対応について記事にしていますので、よろしければ合わせてご覧ください。

ZOZOで学ぶ、TOB(公開買付)規制と投資家の対応

ファミリーマートの株主は50.1%伊藤忠で30%がインデックスファンド??

伊藤忠の66ページにのぼる本件の適時開示の5ページ目に以下の記載が出てきます。

②買付予定数の下限を50,114,060株と設定している理由
公開買付者は、(中略)、本公開買付けが成立した場合に伊藤忠商事及び公開買付者の所有割合が60%以上となるように、買付予定数の下限を設定することといたしました。
公開買付者は、(中略)、対象者株式を所有するETF(上場投資信託)やその他のパッシブ・インデックス運用ファンドの中には公開買付けの条件の適否にかかわらず、原則として公開買付けへの応募を行わない方針の者が存在しているものと考えております
(中略)
公開買付者としては、取引条件の適否にかかわらず、原則として公開買付けへの応募を行わないおそれのある投資家が対象者株式の約30%程度を所有しているおそれがあると分析しております。
(後略)

出所:伊藤忠商事株式会社 7月8日付適時開示(略と太字強調は執筆者による)

全容が分かるようにポイントを箇条書きにします。

  • 伊藤忠は現在ファミリーマート株式の50.1%を保有。
  • 本件TOBの下限株数は、成立時に伊藤忠の保有割合が60%になるように設定。
  • 本来であれば、総会の特別決議(スクイーズアウトのための株式併合に必要)を単独で満たせる3分の2超(66.66%超)を成立要件にしたい。
  • ただし、TOBへの応募が見込めないETFを含めたパッシブファンドがファミリーマート株式の30%程度を保有している模様。
  • TOB応募が見込めるのが、伊藤忠(50%)とパッシブ(30%)を除いた20%だけの状況で3分の2超を下限にすると、20%中の16.66%を集める必要があり、条件達成が困難。
  • そのため、TOB応募が見込める20%の半数にあたる10%の応募(賛同)が得られた時にTOBが成立するよう下限を設けた。

実は、このスキームは、以下のことを暗黙に前提にしています。
「パッシブファンドの運用者は、TOBには応募しないが、TOBが成立すればその後の臨時株主総会では少数株主のスクイーズアウト(株式併合)に賛成票を投じるだろう。」
買付者の伊藤忠はTOB価格の2,300円は「適切な価格」という立場ですから。

10年前はパッシブファンドの議決権行使を真面目にやっている機関投資家は少なかったです。
ただ、日本版スチュワードシップ・コード等いろいろあり、昨今ではパッシブ運用でも議案を精査し議決権を行使することが求められています
議決権行使助言会社のISSとグラスルイスや、実質株主調査のアイ・アールジャパンのビジネスが2010年代に急拡大したのはこのためです。

パッシブファンドの運用者がTOBに応募しない理由

適時開示にあるように、パッシブファンドは基本的にTOBには応募しません
まだTOB銘柄が指数から除外されるタイミングではないからです。
ベンチマーク(指数)との連動が目的のパッシブファンドは、指数が銘柄を除外するすタイミングでファンドから銘柄を外します。このタイミングがずれるとトラッキングエラーの要因になります。

通常は、指数算出者は上場廃止が決定してからTOB銘柄を指数から除外します。
例えばTOPIXでは、本件のようなケースでは整理銘柄指定(≒上場廃止決定)の後に指数から除外されます。
7月8日のTOBの公表を受けてファミリーマート株は東証で監理銘柄(確認中)に指定されていますが、引き続きTOPIXの構成銘柄です。
TOBが成立し、臨時株主総会でスクイーズアウト(少数株主の保有株数が1株未満となるような株式併合)が決議されたタイミングで、上場廃止が決定(≒整理銘柄指定)し、それを受けてTOPIXから除外されます。

これがパッシブ運用者はTOBに応募しない理由です。

おわり

以上です。
このような検討は過去にもあったのかもしれませんが、自分は本件で初めて見ました。
改めて、現在はインデックス運用と日銀ETF保有の時代だと意識させられます。

ちなみに、ファミリーマートの有価証券報告書の「大株主の状況」で確認できる信託銀行やカストディアンの保有比率を合計すると25%程度でした。名簿の下の方まで見れば30%になりそうですが、アクティブとパッシブの切り分けをどうやったのか等、詳細が気になります。

  • この記事を書いた人

ton

2007年から運用会社や金融機関の運用部門で株を中心に見てきました。 現在は運用業務からは離れていて運用は自己資金のみ。 投信の請求目論見書や指数の算出要領からプロダクトの中身に迫るのが好き。

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