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原油ETF上がらない問題のシンプルな解説(中身を見る!)

本稿では、原油ETFと報道ベースのWTI原油先物価格との価格乖離を2020年3月から4月第1週までのETFの価格をもとに見ていきます。

原油ETF問題のシンプルな理解は
「原油ETFは月中の3分の1から3分の2に相当する期間は第2限月の原油先物を保有しているため、ニュースで見る直近限月の原油価格を期待すると違和感がある」
ということです。

他のブロガーの皆様にご紹介いただいた「1671と1699は結局どの時点で何月限を持っていたのか?」については以下のページ内リンクの「3 価格乖離のシンプルな理解(中身は5月限か6月限のどちらか?)」から直行できます。

最終更新:2020年7月
冗長なところを削り、2020年4月下旬以降の原油ETFの状況のフォローアップを末尾に記載しました。

原油ETFの注意点

原油ETFへの投資で特に注意すべきなのは以下の2つです。

日頃見ているつなぎ足の「原油先物価格」はバーチャルである

ニュースや投資情報サイトに出てくる「WTI原油先物価格」は、直近限月の原油先物価格をつなぎ合わせたもの(つなぎ足)です。
先物取引には期日があり、実際に取引されているのは「WTI原油先物1月限」「WTI原油先物2月限」...といった期日の異なる別々の銘柄です。
つなぎ足では、直近限月(期日が1番近い銘柄)が変わるたびに次の限月の先物(銘柄)の価格にジャンプします。
異なる銘柄の価格をつなぎ合わせているため、つなぎ足の「原油先物価格」は実際には存在しないバーチャルなものです。

ロールオーバー時の限月間の価格差の影響を受ける

つなぎ足の原油先物価格はバーチャルであるため、先物で原油のエクスポージャーを取るプロダクトは、直近限月の先物の取引終了日が近づくたびに、次の限月の先物(第2限月)に乗り換えます(ロールオーバーする)
この際に、直近限月の先物と第2限月の先物の価格差が、ファンドのパフォーマンスに影響します「上昇局面でコンタンゴだとファンドの基準価額が原油先物価格ほど上がらない」ということは自分も含めて多くの人が発信しています(痛い目にあっている?)が、ざっくり言うと以下のようになると認識しています。

コンタンゴ(直近限月より第2限月の方が先物価格が高い)のときに
⇛ロールオーバー後に先物価格が上昇⇛パフォーマンスにはマイナス
⇛ロールオーバー後に先物価格が下落⇛パフォーマンスにはプラス

バックワーデーション(直近限月より第2限月の方が先物価格が低い)のときに
⇛ロールオーバー後に先物価格が上昇⇛パフォーマンスにはプラス
⇛ロールオーバー後に先物価格が下落⇛パフォーマンスにはマイナス

以下の記事は自分が痛い目にあった経験から書いています。

原油価格が回復しても私の原油ETF(1699)が含み損な理由

私は2015年から2018年までNISA口座で野村アセットマネジメントの原油ETF(1699)を保有していました。 このETFは、NYMEX ...

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また、1671の運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメントのサイトに直感的にも分かりやすい説明があります。

1671と1679の価格乖離

具体的に、WTI原油先物価格と原油ETFの価格乖離を細かく見ていきましょう。

価格乖離から見えてくるもの

下表は、2020年2月28日から2020年4月3日までの1671および1699とWTI原油先物円換算の価格乖離です。
左の3列がETF2本の基準価額とつなぎ足のWTI原油(円換算)の日次の騰落率です。
取引所終値ではなくETFの基準価額を使い、前営業日のWTI原油終値を当日の銀行TTMで円換算することで時点をきれいに合わせるのがポイントです。
右の2列がETF基準価額の騰落率からWTI原油(円換算)の騰落率を引いてリターンの乖離を算出したものです。

単純な数字の羅列ですが、これを見ているだけで、中で起こっていることがある程度見えてきます。

つなぎ足要因

3月23日に両ファンドとも価格乖離が大きくなっています。これがおそらく、つなぎ足の価格ジャンプのためです。
WTI原油先物の最終取引日は「決済の前月25日の3営業日前」なので、4月限の先物は3月20日が最終取引日でした
上の表で採用している原油先物価格は20日にかけて3営業日かけて4月限と5月限をつないでいるため、このタイミングでつなぎ足が参照する価格が5月限に切り替わったのが同日の乖離の要因だと推測します。

ロールオーバー要因

原油ETFのロールオーバーのタイミングは1671は非開示ですが、1699はベンチマークである野村原油ロングインデックス(野村證券算出)のメソドロジー(算出要領)から推測することが出来ます。
詳細は、メソドロジーの原典を参照していただいた方が良いですが、米国の月初6-7営業日(日本は7-8営業日)にかけてロールオーバーを行う前提で算出されているようです。

1699は3月10日以降に乖離が大きめな日が続いており、これはロールオーバーの影響だと推測します。ただ、最大でも-0.43%であり、投資家の不満につながるような水準ではありません。
一方、16713月26日以降1699の比ではない水準の価格乖離が発生しています。下落した日にプラス(それほど下がらない)、上昇した日にマイナス(ついて行けていない)が多いため、このあたりでロールオーバーしたのではないかと推測します。
特に、トランプ大統領が減産に言及したことで大きくスパイクした4月3日(米国2日)の上昇に大きく劣後しています。

価格乖離のシンプルな理解(中身は5月限か6月限のどちらか?)

上の表でもイメージは分かるものの、WTI原油をつなぎ足ではなく5月限と6月限に切り分けるとさらに見通しが良くなります。
下表では、ETFの基準価額の騰落率と、WTI原油先物(円換算)の4月限、5月限、6月限の騰落率を比較しています。
そして、各ETFが5月限を保有しているであろう期間を青色セル5月限から6月限にロールオーバー中だと思われる期間を黄色セル6月限を保有しているであろう期間を緑色セルに色分けしています。

これを見ると各ETFがどの限月の先物を保有しているかがよく分かります。
まず1671は3月19日までは5月限と同水準の騰落率ですが、23日以降に乖離が出てきます。
そして3月30日からは6月限と同水準のリターンになりました。前項で推測したように、3月下旬に6月限にロールオーバーしたと見ていいでしょう。
一方、1699は、4月10日以降に5月限との乖離が拡大し、6月限との乖離がなくなりました。
ベンチマークのロールオーバーのタイミングと重なるため、ファンドもこのタイミングで6月限にロールオーバーしたと考えられます。

おわり:原油ETF問題のシンプルな解説⇛中身が違うから

以上です。
参考になれば嬉しく思います。

冒頭に挙げたように「原油ETFは月中の3分の1から3分の2に相当する期間は第2限月の原油先物を保有しているため、ニュースで見る直近限月の原油価格を期待すると違和感がある」ということです。
目論見書や運用会社ホームページの公式な情報発信では、先物の限月間の価格差がファンドに与える影響にフォーカスしていますが、日々の違和感の正体は「中身が違うから価格形成が違う」というのが最もシンプルな回答です。
特に、最近の市況では、直近限月と期先で価格形成がかなり異なっています。COVID-19の影響による世界的なエネルギー需要の縮小の程度と時間軸が不透明であることや、産油国の減産対応への思惑、また、原油在庫の増加から保管コストに注目が集まっていることで、現在の市場では受渡しが1ヶ月異なることが価格形成に大きく影響しているのだと推測します。

参考:2020年4月末以降の原油ETF

2020年4月に原油先物が一時マイナス価格をつけたことを受けて、USO、1671、1699などの原油ETFは、かなり期先の限月の先物まで保有しています。
2020年7月現在では、原油ETFの多くが「直近限月または第2限月を保有し直近限月の値動きに追従する」戦略を放棄しています。

不規則なロールオーバーを採用した原油ETFの1671と1699に起きていること

2020年4月の原油価格下落を受けて、米国のUSO、日本の1671や1699のような原油ETFでは、それまで直近限月中心だった運用方針を放棄 ...

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