株式投資

コロナショックでどこまで下がるか?(PBRから見る日経平均とS&P500の下値目処)

2020年3月15日

本稿では、コロナショックによる株価下落の最悪の下値の目安をざっくり試算します。
不安を煽る意図はありませんが、自分も長期目線のポートフォリオを持っているため、心構えのために行いました。

暴落時はPBRかテクニカル。PERはあてにならない。

株価急落時の下値の目安を見る時に使われやすいのはPBRテクニカルです。

PBRは、算出のもとになっている「一株当たり純資産(BPS)」がブレにくいので、企業業績への影響が不透明な状況でもあてにしやすいです。
消費や投資が低迷すれば景気敏感な産業では赤字の企業が出てくることが避けられません。ただ、分散された株価指数全体ベースで当期純利益が赤字になり、BPSが減少する可能性は低いです。本稿ではPBRから見ます。

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なお、本稿では取り上げませんが、テクニカルも心理学として期待できます。プロでもファンダメンタルズがあてにならない短期の時間軸でディーリングやトレーディングした経験がある人はテクニカルを重視していました。

一方、こういう時にあてにならないのがPERです。普段目にするPERのベースになっているのは「今期の予想EPS(日本株)」「12ヶ月先予想EPS(米国株等)」のいずれかです。現在の予想EPSには、新型コロナウイルスによる物流と人の移動の停滞の影響が十分に織り込まれていないため、現在の予想EPSに基づく下値メドはあてに出来ません
また「実績EPS(日本だと前期、米国株では12ヶ月トレイリング)」で見ればブレはありませんが、それならPBRの方が良いと考えます。

PBRから見る日経平均とS&P500の下値

日経平均の下値目処:0.80倍16,500円、0.75倍15,500円

日経平均の足元のBPS20,751円です。

以下のように算出します。
日経新聞ホームページの「国内の株式指標」に、日経平均や東証1部(≒TOPIX)ベースの時価総額やマルチプルが載っています。新聞の紙面と同じ数字です。
ここで、3月13日終値ベースの日経平均の純資産倍率(PBR)は0.84倍であり、この時の日経平均が17,431.05円なので、逆算すると日経平均ベースのBPSが得られます(BPS=株価÷PBR)。
(本稿では踏み込みませんが、日経市況欄に出ている「日経平均のPBR」には突っ込むとかなりややこしい問題があります。ただ、利用可能な範囲では相応に妥当な数字であり、皆が見ている数字でもあるためここではこの数字を採用します。)

次に、このBPSをもとにPBRに基づく下値を見ていきます。
この2週間ほどWBSやモーサテを筆頭に様々な報道で出てきますが、リーマンショック時の日経平均の最低PBRが0.81でした。これは日経平均16,800円(20,751×0.81)に相当します。13日のザラ場の安値がこれを少し下回った水準でした(16,690円)。
ここで「今が底値圏」と見るのもありですが、リーマンショックの水準で止まるというのも希望的な観測なので少し幅を見ておきましょう。

最後は結局決めの問題になりますが、0.75倍の15,500円、0.70倍の14,500円をオーバーシュートした場合の下値のメドとして見ておきます。それぞれ高値から▲36%調整、▲40%調整です。

S&P500の下値目処:最低PBRを適用すると1,600や2,000になる?

金融危機の最低水準をあてはめる

S&P500の足元のBPSは891です。これは算出会社の直近のファクトシートの2019年9月30日時点のPBR3.34倍同日の指数値の2,976.74pt(半年前がすごく遠く感じる!)から逆算したものです。

3月13日の指数値の2,711.02と、BPS891をもとに計算すると、足元のS&P500のPBRはちょうど3倍です。
これに対して、金融危機時の最低PBRは1.8倍です。指数のヒストリカルのバリュエーションは無料のソースだとなかなか見ることができませんが、以下のサイトではかなり豊富な情報があります。(上の数字と少しずれますがBPSも長期推移が載っています。)

https://www.multpl.com/s-p-500-price-to-book

この数字は自分の認識と比較しても違和感ありません。だいたい米国株のPBRは2.5倍から3倍の印象です。
改めて考えると急落前の米国株のPBRはかなり高かったことが分かります。ただ、単に割高だったというわけではなく、バランスシートを使う産業のウェイトが下がり、ITのウェイトが増えたことも重要なポイントだと思います。

レンジが広くなるので、ここでは先に表を出します。

3月13日の終値の2,711ptは3.05-3.00倍のところにいます。直近最安値の12日の終値の2,480ptは2.75-2.80倍です。
これに対して、金融危機時の1.80倍を機械的にあてはめると、指数の水準は1,604ptになります。高値(3,386pt)からのドローダウンは▲52%なのでほぼ金融危機の2年間(2007-2009)のドローダウンと同じです。

にわかには信じられません。
「こんなん起きたら世界が壊れるわ」という印象です。

物価上昇を調整する

現実から乖離しているように見えるので、少し材料を追加します(鉛筆を舐める)。

2009年から現在までの12年間の物価上昇を加味します。
株価は物価上昇を内包しています。
それに対して、PBRの分母であるBPSは物価上昇に対して「鈍い」数字だと考えられます。各年度の内部留保の増加額はインフレが乗ったEPSがもとになっていますが、過去に株式で調達した資金と過去に算入された利益は基本的に後から変わりません(自社株買いはここでは考えません。)。
その点を考慮し、PBRにインフレ率を調整します。PBRが最低だった2009年2月から足元までの米国のCPIの変化は+22%です。雑ですが、この物価上昇分だけPBRの拡大が許容されると考えると、1.8倍に相当する現在のマルチプルは2.2倍と推計できます(1.8×1.22)。
表で見るとちょうど2,000ptのあたりになります。最高値から▲41%ドローダウンです。
CAPEレシオ(シラーPER)がインフレ調整することから着想を得た試算ですが、他にやってる人を見たことがないため理屈がおかしいかもしれません。参考として見ていただきたく存じます。

これでも現在の水準と比べるとかなり厳しい数字です。金融危機の震源が米国の金融機関だったことや、ここ10年間で米国のITセクターが世界を変えたことを考慮すると、ちょっと悲観的すぎると自分でも思います。ただ、直近の安値の2,480ptもPBR的には過度な調整感が無いという視点は持っておきたいと思います。

おわり

以上です。

具体的な水準を取り上げましたが、特定の戦略を推奨する意図はありません。
ボラティリティと付き合う一助になれば嬉しく思います。

 

 

 

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